航空気象を、一歩先へ。『3DARVI』が目指す未来

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3D航空気象アプリ『3DARVI』サービス紹介動画

企画・開発者インタビュー

 

プロフィール

ライフ・エンターテインメント・スポーツ事業本部 ライフ事業部
気象サービス部長
小池 佳奈

大学時代環境分野を学び、大学院1年の時に気象予報士の資格を取得。
当社では気象予報士の知識や実務経験を生かしたサービス企画を主に担当。2019年に航空気象システム『ARVI』を立ち上げ、2021年8月に『3DARVI』をリリース。

航空の現場での使いやすいUIと、被雷危険領域予測技術搭載に向け試行錯誤の連続!

『3DARVI』のリリースまでの道のりを教えてください。

 気象関係のシンポジウムにて、ゲリラ豪雨予報アプリ『3D雨雲ウォッチ』の取組みを紹介したところ、航空事業者の方から「気象現象を3Dで可視化することは航空業界で役に立つのではないか」と意見を頂きました。
 そこで、様々な航空事業者の方が参加されている会議で『3D雨雲ウォッチ』を紹介し、3D可視化のノウハウを航空気象でどのように活用できそうかディスカッションさせて頂きました。その中で、当社が培ってきたコンシューマー向け気象情報サービス提供のノウハウや気象情報の3D可視化技術を航空気象の分野でも生かせるのではないかと考え、航空気象システム『ARVI』を立ち上げました。
 その後、ご興味を持ってくださった全日本空輸株式会社(以下、ANA)とともにプロトタイプを作成し、本格的な事業化に向けて、ANA、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)と共同で『3DARVI』のサービス開発を開始しました。

『3DARVI』のリリースまでに苦労したのはどのような点ですか?

雲の3D画像

雲の3D画像

 航空の運航現場で使いやすいUI/UXのサービスを作ることと、被雷危険性予測技術※を活用した情報をサービスに搭載することが苦労した点です。
 『3DARVI』では、『3D雨雲ウォッチ』のように雨雲を3Dで可視化するだけでなく、航空機の運航に関わる気象現象すべてを3Dで可視化していきたいと考えていました。さらにパイロットやディスパッチャーの皆様が業務で利用しやすいかなど、様々な利用シーン別に最適なサービスデザインを考える必要があり、実際に現場で利用されるANAの皆様からフィードバックを頂き、勉強しながら作り上げています。
 また、なんでも3Dで可視化すればわかりやすいわけではなく、気象予報士としての自身の経験も踏まえ、2Dの方がわかりやすい情報は2Dで見せる判断をするなど、より使いやすいUIを実現するために社内でも議論しながら開発を進めました。
 『3DARVI』には、JAXAが開発を行っている航空機被雷が発生しうる領域を予測する世界初の技術(被雷危険性予測技術)を搭載しています。その予測技術を活用させて頂き、被雷危険領域予測をリアルタイムに表示するためのアルゴリズム調整を行い、現場で実際に利用するためには、どのようにサービス上で表示すべきかをJAXA、ANA、当社の3社で何度も話し合いを重ね、試行錯誤しながら実現しました。

航空経路の気象状況を3D可視化することで誰もが認識しやすいものに

『3DARVI』のサービスのポイントは?

 やはり一番のポイントは気象情報や航空情報を3Dで可視化している点です。
 今までの2Dの気象情報では、パイロットやフライトプランを作成するディスパッチャーの皆様は、航空機が地上から上空へ飛んでいく経路において、「上空〇〇hPaと××hPa付近の天気図を見ると、この高度が揺れやすそうだな、被雷しやすいから気を付けよう」など、航空機の安全運航に向けて考慮しなければならないいくつもの2Dの気象情報を頭に入れ、それらを立体的にイメージし、危険回避の判断をしたりフライトプランの検討をしなければなりませんでした。
 しかし、航空機の運航に必要な気象現象を3Dで表示することで、パイロットやディスパッチャーの皆様が頭の中でイメージしていた航空経路の気象状況を、誰もが簡単に視覚的に捉えることができるようになります。
 また、気象状況を立体でイメージすることは、業務経験が浅い人や不得意な人にとっては難しく、ベテランであってもそれなりに時間のかかる作業ですし、個人個人によって認識に差が出る部分もあるかと思いますが、そういった課題も3D可視化により解決でき、業務の効率化にもつながると考えています。

被雷危険領域の予測を実現し、より安心安全なフライトへの貢献を目指す!

『3DARVI』で今後実現したいことを教えてください

 現在はリアルタイムに被雷危険領域予測を可視化するものですが、数時間先まで予測することで飛行機が目的地に到着する時の予測を確認できるよう、予測時間の延伸を目指しています。
 また、近年ゲリラ豪雨が多く発生していますが、それは航空機の運航にも影響する積乱雲が発生しやすくなっている状況と言えます。現在、航空機の被雷や揺れに繋がる可能性のある積乱雲などの気象現象が発生した際には、多くの場合水平方向に避ける形で回避されていると伺っていますが、『3DARVI』にさらに様々な気象情報を盛り込むことで予測の精度が向上すれば、高度を上げ下げすることにより安全が確保できる新たな選択肢が増えて、より安心・安全に航空機を運航できる未来の実現に向けて少しでもお役に立つことができるのではないかと考えています。

 

※:JAXA 「WEATHER-Eyeビジョン」 https://www.weather-eye.jp/files/pdf/WEATHER-Eye-Vision_rev3_final.pdf

<JAXA 被雷危険性予測技術について研究発表>
Yoshikawa, E., & Ushio, T. (2019). Tactical Decision-Making Support Information for Aircraft Lightning Avoidance: Feasibility Study in Area of Winter Lightning, Bulletin of the American Meteorological Society, 100(8), 1443-1452. Retrieved May 17, 2021, from
https://journals.ametsoc.org/view/journals/bams/100/8/bams-d-18-0078.1.xml

 

プロフィール

土屋 雅尚

2011年に入社後『music.jp』のAndroidアプリを中心に開発を行い、2019年より気象サービスの開発に従事。『3DARVI』では主に被雷危険領域の可視化を実現するための開発を担当した。

被雷危険領域のリアルタイム表示に向けたアルゴリズム調整とは?

『3DARVI』の開発にはどのように携わりましたか?

 JAXAが実施する、過去の航空機被雷実績と気象データの分析により、航空機被雷が発生しうる領域を予測する世界初の技術である、被雷危険性予測技術を活用して、リアルタイムに被雷の可能性がある領域を3Dで可視化するためのアルゴリズムの調整を主に担当しました。

リアルタイムに被雷可能性を可視化するためのアルゴリズムとはどのようなものですか?

被雷危険領域予測表示サンプル画面

被雷危険領域予測表示サンプル画面

 JAXAの被雷危険性予測技術は、日本国内の研究のために選んだ範囲で観測された過去の気象データをもとに研究を進めてこられました。実際に航空会社が日本全国、最新の気象条件に合わせてリアルタイムで利用するには技術的課題がありました。そこで、被雷危険性予測技術の理論に基づき、当社が取得している日本全国の更新頻度が高い最新の気象情報を用いて、被雷危険度を算出するアルゴリズムに改良しました。これにより、日本全国の空港付近の被雷危険度をリアルタイムに算出することができます。
 本アルゴリズムによって算出された被雷危険度は、JAXAの研究理論で導いたものと相違ないものであるとJAXAからも認められています。
 また、更なるアルゴリズムの改良として水平方向の被雷危険領域を表示するだけでなく、高度による絞り込みを組み込み、3D表示できるよう調整しました。なぜなら、同じ被雷危険領域であっても高度によって危険度は変わり、フライトの際に高度を上げ下げする形で被雷を回避する選択肢が増えることで、より安全な運航判断がしやすくなると考えたからです。

被雷危険領域予測時間の延伸を目指し、新たなアルゴリズム作成に挑戦

『3DARVI』の今後の展望は?

 運用を開始したばかりのサービスなので、サービス自体をより使いやすく改善していきたいと考えています。
 さらに、現在は被雷危険領域のリアルタイム表示をしている段階なので、飛行機が飛ぶ前に到着予定時刻の目的地周辺の被雷予測を目指し、今後予測時間の延伸を考えています。被雷危険度の「リアルタイム表示」と「予測」では別の気象情報を使う必要があるため、予測のアルゴリズムを作るために一から考えて準備をしていきたいと思います。

 

プロフィール

平野 祐一

2015年開発職として新卒入社。『music.jp』の開発などを経て『ARVI』、『3DARVI』の開発に従事。サービスを開発する上での上流工程となるシステム全体の設計を担当するシステムアーキテクトを主に担当した。

データ量は毎日4億レコード?!膨大なデータの高速処理を実現

『3DARVI』の開発ではどのような役割を担いましたか?

 主に気象やフライトデータをサービス上で表示するために、データを使いやすい形に変換するシステムの設計を担当しました。
 気象に関するデータはデータ量がとても大きいものが多いです。数値予報モデルという種類のデータでは航空機の飛行に必要な10~100個くらいの限られたデータを取り出しやすくするためにデータを分解するのですが、これが1データ当たり数千万レコードになることがあります。“レコード”というのは、例えばエクセルの1行だと思っていただけるとわかりやすいと思います。その“レコード”が合計すると1日に4億ほど届きます。
 その大量のデータを変換し、効率的に取得する仕組みを考えてシステム設計をすることで、サーバーの負荷を軽減し、予算を抑えつつ必要なデータを高速に抽出することを実現しました。

『3DARVI』の画期的な部分はどのようなところですか?

ARVI上の航空経路の断面図サンプル画面

ARVI上の航空経路の断面図サンプル画面

 『ARVI』や『3DARVI』では航空経路の断面図を表示できるのですが、気象情報提供元から送られてくる膨大なデータを適切に処理・加工することで、飛行経路の気象情報を数分以内に高速に取得し、アプリ上に1秒未満で正しくグラフィカルに表示することを実現しています。今までこのようなシステムがなかったため、航空会社の方々にも「こんなに早く表示できるの!?」と驚かれ、喜ばれているようです。

 さらに被雷危険性予測技術を搭載していますが、誘発雷の危険度をリアルタイムに可視化するためには、10分毎に送られてくる最新の気象データを10分以内に処理する必要があります。高速にデータを処理し、誘発雷の危険度を算出するためにシステムの性能を高めることで、被雷危険領域のリアルタイム表示を実現しています。

『3DARVI』ならではの情報を搭載し、強みを増やす

『3DARVI』で今後どのようなことを目指していますか?

 現在、運航に必要な基本的な気象情報やフライト情報を表示させることはできていますが、ほかの情報もアプリ上で表示できないかといった要望もあり、その実現に向けて考えていきたいと思います。
 開発したシステムにはデータの処理量に十分な余力があり、追加でデータを処理することは可能なので、今後必要とするデータをいかに取得しサービスに搭載していくかが課題となります。利用者の要望に応え、『3DARVI』だからこそ提供できる強みを増やしていきたいです。

 

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