テレワークのメリットが分かれば変われる。

 新型コロナウイルス感染症の流行によるBCP対策として全社的にテレワークへ移行した当社。その後テレワークスタンダード化プロジェクトを立ち上げ、現在、テレワークは多様な勤務体制の選択肢の一つとなっています。  テレワーク移行時の取組みについて担当部門へインタビューする企画の第三弾は、パソコンの貸出やライセンス、社内基幹システムやネットワークなどの運用・保守・管理を行うICT室の小形雅彦室長、山崎昇司部長、小屋野寛マネージャーに、当時の対応やシステム部門の視点でのテレワーク移行へのポイントなどを伺いしました。     ▶第一弾:人事部編はこちらから ▶第二弾:BCP委員会編はこちらから BCPの活用とスピード優先でテレワークの規模拡大に対応! ―コロナ禍以前のテレワーク環境はどういったものだったでしょうか? 山崎:コロナ禍以前から、休日夜間に緊急な業務で会社のパソコンに接続する必要がある場合や、また、全国に営業所があることもあり、東京にある本社サーバーのファイルや勤怠システムなどにアクセスできるようなテレワーク環境を用意しており、200名程度であれば同時接続が可能な状態でした。  それとは別に地震などの災害のためのBCPとして、AWSを補填として使えるように準備を行っていました。そして、今回、新型コロナウイルス感染症の流行をうけて、この枠を活用し最大で1,000名程度使えるような環境を整えていきました。 ‐200名程度の想定から急ピッチで全社テレワーク制へ移行しましたが、セキュリティ対応など、留意した点や苦労したことを聞かせてください。 小屋野:まず大変だったのは自宅から会社のパソコンに接続するために必要なパソコンを用意する事でした。2019年10月の期初の時点では、コロナ禍でのリモートワークなどを考えるような状況ではありませんでしたから、想定よりも多くのパソコンが必要となりました。機器の用意は予算よりもスピード優先で行い、普段は一般、開発、薄型の3種類を用意していますが、早く納入できることから薄型を優先に発注していましたね。 山崎:セキュリティ対策としては、アクセスできる会社のリソースに制限をかける事で対応しました。AWSは社内に置いているパソコンにのみ接続できるようにし、このパソコンから会社のファイルサーバーやシステムにアクセスする、という形式です。  また、2020年12月にはクライアントVPNという接続方式も用意し、会社から貸与されているパソコンであれば、自宅などの社外でも直接会社のファイルサーバーへ接続できるような環境を整えました。テレワークスタンダード化をうけ、長期的な利用を見据えて、従業員が使いやすく、かつセキュリティ面を担保できるよう留意して、導入を進めていきました。 小屋野:移行にあたってはリモートアクセス下で必要となるマニュアルを作成するなどして、社内ポータルサイトやBCPのコロナ対応のページなどで周知を行っていきました。それでも、リモートに関する問い合わせや質問があったので、その際は公開している情報を案内したり、基盤システム部※1にエスカレーションするなどして、個別の対応を行うようにしていました。   「押印のための出社」を減らしたい。テレワークでペーパーレス化が加速! ―テレワークへ移行するなか、社内の様々な申請書のペーパーレス化の取組みも進みましたが、ICT室主導で対応されたものはありますか?...

 新型コロナウイルス感染症の流行によるBCP対策として全社的にテレワークへ移行した当社。その後テレワークスタンダード化プロジェクトを立ち上げ、現在、テレワークは多様な勤務体制の選択肢の一つとなっています。
 テレワーク移行時の取組みについて担当部門へインタビューする企画の第三弾は、パソコンの貸出やライセンス、社内基幹システムやネットワークなどの運用・保守・管理を行うICT室の小形雅彦室長、山崎昇司部長、小屋野寛マネージャーに、当時の対応やシステム部門の視点でのテレワーク移行へのポイントなどを伺いしました。

 

 

▶第一弾:人事部編はこちらから

▶第二弾:BCP委員会編はこちらから

BCPの活用とスピード優先でテレワークの規模拡大に対応!

コロナ禍以前のテレワーク環境はどういったものだったでしょうか?

山崎:コロナ禍以前から、休日夜間に緊急な業務で会社のパソコンに接続する必要がある場合や、また、全国に営業所があることもあり、東京にある本社サーバーのファイルや勤怠システムなどにアクセスできるようなテレワーク環境を用意しており、200名程度であれば同時接続が可能な状態でした。
 それとは別に地震などの災害のためのBCPとして、AWSを補填として使えるように準備を行っていました。そして、今回、新型コロナウイルス感染症の流行をうけて、この枠を活用し最大で1,000名程度使えるような環境を整えていきました。

‐200名程度の想定から急ピッチで全社テレワーク制へ移行しましたが、セキュリティ対応など、留意した点や苦労したことを聞かせてください。

小屋野:まず大変だったのは自宅から会社のパソコンに接続するために必要なパソコンを用意する事でした。2019年10月の期初の時点では、コロナ禍でのリモートワークなどを考えるような状況ではありませんでしたから、想定よりも多くのパソコンが必要となりました。機器の用意は予算よりもスピード優先で行い、普段は一般、開発、薄型の3種類を用意していますが、早く納入できることから薄型を優先に発注していましたね。

山崎:セキュリティ対策としては、アクセスできる会社のリソースに制限をかける事で対応しました。AWSは社内に置いているパソコンにのみ接続できるようにし、このパソコンから会社のファイルサーバーやシステムにアクセスする、という形式です。
 また、2020年12月にはクライアントVPNという接続方式も用意し、会社から貸与されているパソコンであれば、自宅などの社外でも直接会社のファイルサーバーへ接続できるような環境を整えました。テレワークスタンダード化をうけ、長期的な利用を見据えて、従業員が使いやすく、かつセキュリティ面を担保できるよう留意して、導入を進めていきました。

小屋野:移行にあたってはリモートアクセス下で必要となるマニュアルを作成するなどして、社内ポータルサイトやBCPのコロナ対応のページなどで周知を行っていきました。それでも、リモートに関する問い合わせや質問があったので、その際は公開している情報を案内したり、基盤システム部※1にエスカレーションするなどして、個別の対応を行うようにしていました。

 

「押印のための出社」を減らしたい。テレワークでペーパーレス化が加速!

テレワークへ移行するなか、社内の様々な申請書のペーパーレス化の取組みも進みましたが、ICT室主導で対応されたものはありますか?

小形: AgileWorks※2を導入していることもあり、以前から、紙で押印、回覧していた書面については、その主管部署から依頼があれば電子化を行っていました。
 そのため、特別に具体的な働きかけなどは行いませんでしたが、1カ月に1件程度だった電子化の依頼が、テレワークへの移行が進むなかで、多い時には週3~4件依頼があるような状況になりました。もともと、押印の必要な書類の電子化を検討していたものが、コロナ禍をきっかけに実現に動いた、という感じでしょうか。

 

日常として、より使いやすい環境整備へ改善を続ける

テレワーク移行後に新たに出てきた課題やそれに対する改善策などがあれば教えてください。

小屋野:これまで毎日出社する前提で対応していた業務は見直していきました。例えば、新しいパソコンの受取は、今までなら申請から3営業日ほどで可能でしたが、情報システム部※3内での出社日の調整を行い、現在は7営業日程度が必要となる事を従業員へも周知しています。また、申請者が出社しなくてもパソコンが受取れるよう、郵送での対応や、新旧のパソコンのデータ移行も、有線でパソコンとパソコンをつないで行うのではなく、クラウドストレージを活用して、バックアップを取ることで実施できないかなどを検討しているところです。

小形:もともと準備していたテレワーク環境は東日本大震災をきっかけとしたBCP対応で、AWSなどのリソースも1カ月から2カ月を想定していたものです。今回のコロナ禍のように1年以上続くといった状況は考えていたものではなかったため、まず既存のBCP向けのインフラを活用して開始し、1年をかけて、テレワークスタンダード化の働き方に合わせて改善していきました。
 1番の課題はコストで、費用を抑えつつ全従業員がリモート接続できる手段を考えて、VPNの導入を進めました。
 また、VPN導入後のセキュリティ対策も必要になります。これまでは社内にあるパソコンを対象にセキュリティ対策を行っていましたが、次は自宅環境に向けての対策を打たなくてはいけません。ログを収集して解析するツールや、リモートの対象となるパソコンをウォッチできるようなツールを入れるなど、日々改善を続けています
 従業員向けのマニュアルなども当初はスピード優先で公開していましたが、その後改善して、徐々に使いやすいマニュアルになってきたと思います。

―業務を走らせながら改善していく、ということでしょうか?

小形:そうですね。PDCAではないですが、課題が出たらどんどん直して、新しくリリースをしてきた結果だと思います。2021年4月からはテレワーク環境に向けたセキュリティも強化し、更に使いやすい環境を提供できるようになりました。
 自宅のネットワーク環境も無線・有線など人によって異なりますので、人事部やコンプライアンス委員会からも啓蒙活動をするなど、少しずつリテラシーの向上を図ろうと動いています。

 

現状を把握して自社に適した方法を選択。テレワークは「できるところから」

―テレワーク制導入を考えている企業に向けて、IT部門の視点からのアドバイスを。

小形:様々な企業から多様なツールが出ていますが、導入するにあたってはまず、「自分たちが何をやりたいか」「どういうスタイルが良いのか」を考えるところから進めていくのが良いのではないでしょうか。例えば、VDI(仮想デスクトップ)を導入しようと考えていた場合、会社が「テレビ会議を積極的にやっていこう」という方針であれば、音声が取れないために使い勝手が悪くなります。ですから、自分の会社のスタイルを考えてそれにあったツールを選択し、失敗しても少しずつ直しながら実施することが重要だと思います。

山崎:まずは自社がどういう状況であるかを棚卸することから始めると良いと思います。私たちはこれまでにテレワーク環境の整備に向けて積みあげてきたものがあり、まずは外からアクセスできるようにしよう、それからAWSを出して、と順番に改善しながら取り組めたことで、切り替えがうまくいったと考えています。
 もし、そのような段階でないなら、自分たちが「何がしたいか」「どういう状況にあるのか」をまず整理することで、的を絞ったツールの選定などが可能となります。それから、ぼやっとしたものでも良いので、ゴールを描いてから実施することで、ブレがなくなっていくと思います。

―他の企業から「うちの会社は業種的にできない」という声もききますが、その中でもできることを洗い出すことや、現状把握していくことが大事ですね。

山崎:そうですね。まず、「なぜ出社してこなければならないのか?」というところから考えるといいと思います。
 例えば、承認フローで押印の必要があるから出社しなければいけない場合、「電子化できない事なのか?」と考える。私たちはAgileWorksを利用して、書類を電子化しペーパーレス化を進めましたが、そのようなサービスを使う事も一つの手段だと思います。そうすることで出社しなければならない業務が徐々になくなっていきます。「できない」というと話が止まってしまうので、そういう意味でもできる所を探す、棚卸していくことが大事ではないでしょうか。

小形:出社しなくてもできる業務を洗い出す、という考え方でも良いと思います。どうしても出社しなければいけない事以外は出社しなくてもできるのではないか、という考えで業務を見直していく。そうすると、週5日出社する必要がない、という事が見えてくると思います。
 一方で、テレワークでは出社時に比べて部門間のコミュニケーションが取りづらいなどの問題もあり、全てテレワークにする必要もないと思いますので、テレワークと出社をミックスしていくというのが今後も継続していく上での流れになるのではないでしょうか。

IT企業でリテラシーが高いからテレワークができるのではないか?と思われる方もいると思うのですが…

山崎:当社も様々な職種や世代の人がいて、従業員全員のリテラシーが高いわけではないため、リテラシーの高さは関係ないと思います(笑)

小形:リテラシーというより、便利だと思ったらやってみる、というチャレンジ精神があるのではないでしょうか。実施する前にできないという人もいますが、実施した際のメリット、デメリットを伝えた時にメリットを知って動く人が多い。また、経営陣のテレワーク推進の方針もあり、テレワーク環境を整備するための支援金などが従業員にも支給された事も、当社でテレワークの移行が進んだ一因かと思います。
 「リテラシーが高くない」「業種的にテレワークに向かない」と諦めてしまわず、現状を把握してできる所から進めていく、という事が大切だと思います。

 

※1 ICT室下の部門。サーバーおよびネットワーク・基幹システム(テレワーク環境など)の管理を行う
※2   稟議や決裁の業務手続を電子化したシステム
※3   ICT室下の部門。パソコンの貸与、セキュリティ対策などを行う

 

※Amazon Web Services、『Powered by Amazon Web Services』ロゴ、[およびかかる資料で使用されるそのほかのAWS商標]は、米国および/またはその他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
※「AgileWorks」は、株式会社エイトレッドの登録商標または商標です。

コロナ禍のBCP対策から、テレワークを日常へ。

 新型コロナウイルス感染症の流行によるBCP対策として全社的にテレワークへ移行した当社。その後テレワークスタンダード化プロジェクトを立ち上げ、現在、テレワークは多様な勤務体制の選択肢の一つとなっています。  テレワーク移行時の取り組みについて担当部門へのインタビュー企画第二弾となる今回は、BCPにかかわる各種対応を行い、テレワークスタンダード化プロジェクトでも主要な役割を担ったBCP委員会・工藤志敏さんに、当時の対応と今後の取組みについて聞いてみました。     ▶第一弾:人事部編はこちらから 災害対策としてテレワーク勤務を開始。事前の想定からさらに踏み込んだ対応に。 ―BCP委員会の活動内容と新型コロナウイルスの感染拡大をうけてどのような対応をされたのか教えてください。  BCP委員会は災害などの緊急事態が発生した場合の事業継続計画をとりまとめる組織です。当社では首都直下地震や火災などと同様、パンデミックも以前から想定しており、普段から、マスクや消毒用アルコールなど衛生用品のチェックをおこなっていました。  2020年1月末頃から新型コロナウイルス感染症の国内の感染者について報告がされたため、追加でマスクなどの用品を確保しはじめ、2月からはこれまでの計画に加えて新たな行動指針の作成にとりかかり、翌3月から運用を開始しました。  また、BCP担当役員と人事部を交えて対応を話しあい、まずは従業員に正しい情報配信や注意喚起を促すなど、感染対策としてできることから取り組んでいくことにしました。  行動指針は厚生労働省の情報を基に、当社の環境を踏まえて対応を6段階に分けています。現在(2021年3月)はこれに準じてフェーズ4として対策本部を立て、社長を本部長として全社的、組織的に動いています。   健康・安全確保を最優先するよう、従業員に理解を求める。 ―部署によりテレワーク移行への対応は様々だったと思いますが、働きかけなどはされましたか?  環境や業務の違いなどもあるため、全部署一斉にテレワークへ移行できたわけではありませんが、テレワークへ切り替えるために業務の見直しを各部門積極的に行ってくれたと思います。  開発系の部署は業務面や環境面のハードルが少なかったので、いち早くリモートを開始しました。経理やサポートオフィス※1など物理的に出社が必要な業務がある部門は、出社日数を減らせるように業務の見直しを行っています。また、部門長と部員との間でテレワークへの意識の差があった部署には、BCPから部門長に、従業員の健康・安全確保を最優先し、業務調整をお願いしました。  結果的に、昨年4月初旬には出社率は10%程度となり、会社全体としてスピード感をもって対応できたのではないかと思っています。 ―オフィス出社率が約1割となっていますが、スピード感をもって対応し、スムーズに移行できた要因と、継続できている理由はなんだと思いますか?  機動的に動けたのは前多社長のリーダーシップと、BCP担当役員の武井副社長が現場に寄り添い、一つ一つの課題に対して細かく判断していただいたことが大きかったと思います。「人事面やセキュリティ面などは従業員を信じて、実行し、問題点は走りながら解決しよう」という方針で、素早い判断・意思決定をしていただき、災害時において、それらがとても重要であるということは教訓になりました。  また、それらをまとめていくプロジェクトチームが非常に頑張ってくれたこと、そして、従業員の理解と協力があって、スムーズな移行がすすんだと考えています。  個別の要因としては、まず、従業員の健康・安全を最優先にし、自宅待機としたことです。その上で、自宅で業務をするための環境整備と支援について検討しました。環境面では通信環境や、子育てや介護、あるいは仕事のための部屋がない、といったことも含まれます。これに対し人事部やICT室※2がきめ細かく対応し環境整備に必要な補助金の支給や、テレワーク移行によりフロアを削減することで必要がなくなった椅子やモニターも譲渡することにしました。  また、テレワークに移行するにあたり、従業員一人ひとりが、問題なくテレワーク下で自分の仕事をまわすにはどのような対策が必要かを、経営陣をはじめ各部門でより具体的に真剣に考えてきたことも、大きかったのではないでしょうか。   これからはテレワークがスタンダードに…!BCPで得た知見を参考に、制度の整備へ。 ―テレワークスタンダード化プロジェクトについて、プロジェクト化した理由やメンバー構成を教えてください。  これを機に「社会の働き方はテレワークが標準になるだろう」という、経営陣や現場の総意があり、緊急時ではなかなか整備できなかったITインフラや文書・決裁管理、業務マネジメントなど各分野の規定やセキュリティ、システム面をまとめていくためにプロジェクトが発足しました。  非常時から平時へと移行するにあたり、緊急時の問題・課題、情報をスタンダード化の際に生かせるよう、メンバーはITインフラを担当するICT室、人事部、オフィス環境整備にかかわる総務部・サポートオフィスなど、BCP委員会の対策本部がそのままテレワークスタンダード化プロジェクトに移行しています。 ―テレワークスタンダード化プロジェクトを推進するにあたり苦労したことはありますか?  テレワークの整備を進めていくに従い、オフィスフロアを減らしてレイアウト変更をするなど、対応する範囲がどんどん増えていきました。一方で通常の業務もあるため、整備しながら運用し、また問題があればそれを解決し…。作りながら問題を解決し、もっと品質をあげていく、さらにスピード感を含めて求められる、という点は大変でした。   スタンダード化のその先。出社のメリットとテレワークの課題改善を考える。 ―テレワークスタンダード化になり、今後の課題などはありますか?  テレワークスタンダード化、と言ってもオフィスの出社がないわけではありません。ですから、オフィスに出社する場合は、そのメリットをより感じられるオフィス環境や、会社の方針、福利厚生などを整えていきたいと考えています。 ―今後も継続してテレワークをするにはどのようなことが必要だと思いますか?  業務の効率やコミュニケーションなど、テレワークにおいての課題や要望を継続的に吸い上げて、さらに整備していくことが大切だと思います。  また、緊急時だけではなく、現在と将来を見据えて、「本当に必要な事か?」としっかりと状況を把握し、身のある整備をしていくことが重要ではないかと考えています。不定期であっても、プロジェクトのメンバーで集まる機会を設け、新たな課題などについて考えていく必要があると思います。   ※1 全社の事務的なサポートやファシリティ管理を行う部門 ※2 サーバおよびネットワーク・基幹システム(テレワーク環境など)の管理、パソコンの貸与、セキュリティ対策などを行う部門

 新型コロナウイルス感染症の流行によるBCP対策として全社的にテレワークへ移行した当社。その後テレワークスタンダード化プロジェクトを立ち上げ、現在、テレワークは多様な勤務体制の選択肢の一つとなっています。
 テレワーク移行時の取り組みについて担当部門へのインタビュー企画第二弾となる今回は、BCPにかかわる各種対応を行い、テレワークスタンダード化プロジェクトでも主要な役割を担ったBCP委員会・工藤志敏さんに、当時の対応と今後の取組みについて聞いてみました。

 

 

▶第一弾:人事部編はこちらから

災害対策としてテレワーク勤務を開始。事前の想定からさらに踏み込んだ対応に。

―BCP委員会の活動内容と新型コロナウイルスの感染拡大をうけてどのような対応をされたのか教えてください。

 BCP委員会は災害などの緊急事態が発生した場合の事業継続計画をとりまとめる組織です。当社では首都直下地震や火災などと同様、パンデミックも以前から想定しており、普段から、マスクや消毒用アルコールなど衛生用品のチェックをおこなっていました。
 2020年1月末頃から新型コロナウイルス感染症の国内の感染者について報告がされたため、追加でマスクなどの用品を確保しはじめ、2月からはこれまでの計画に加えて新たな行動指針の作成にとりかかり、翌3月から運用を開始しました。
 また、BCP担当役員と人事部を交えて対応を話しあい、まずは従業員に正しい情報配信や注意喚起を促すなど、感染対策としてできることから取り組んでいくことにしました。
 行動指針は厚生労働省の情報を基に、当社の環境を踏まえて対応を6段階に分けています。現在(2021年3月)はこれに準じてフェーズ4として対策本部を立て、社長を本部長として全社的、組織的に動いています。

 

健康・安全確保を最優先するよう、従業員に理解を求める。

―部署によりテレワーク移行への対応は様々だったと思いますが、働きかけなどはされましたか?

 環境や業務の違いなどもあるため、全部署一斉にテレワークへ移行できたわけではありませんが、テレワークへ切り替えるために業務の見直しを各部門積極的に行ってくれたと思います。
 開発系の部署は業務面や環境面のハードルが少なかったので、いち早くリモートを開始しました。経理やサポートオフィス※1など物理的に出社が必要な業務がある部門は、出社日数を減らせるように業務の見直しを行っています。また、部門長と部員との間でテレワークへの意識の差があった部署には、BCPから部門長に、従業員の健康・安全確保を最優先し、業務調整をお願いしました。
 結果的に、昨年4月初旬には出社率は10%程度となり、会社全体としてスピード感をもって対応できたのではないかと思っています。

―オフィス出社率が約1割となっていますが、スピード感をもって対応し、スムーズに移行できた要因と、継続できている理由はなんだと思いますか?

 機動的に動けたのは前多社長のリーダーシップと、BCP担当役員の武井副社長が現場に寄り添い、一つ一つの課題に対して細かく判断していただいたことが大きかったと思います。「人事面やセキュリティ面などは従業員を信じて、実行し、問題点は走りながら解決しよう」という方針で、素早い判断・意思決定をしていただき、災害時において、それらがとても重要であるということは教訓になりました。
 また、それらをまとめていくプロジェクトチームが非常に頑張ってくれたこと、そして、従業員の理解と協力があって、スムーズな移行がすすんだと考えています。
 個別の要因としては、まず、従業員の健康・安全を最優先にし、自宅待機としたことです。その上で、自宅で業務をするための環境整備と支援について検討しました。環境面では通信環境や、子育てや介護、あるいは仕事のための部屋がない、といったことも含まれます。これに対し人事部やICT室※2がきめ細かく対応し環境整備に必要な補助金の支給や、テレワーク移行によりフロアを削減することで必要がなくなった椅子やモニターも譲渡することにしました。
 また、テレワークに移行するにあたり、従業員一人ひとりが、問題なくテレワーク下で自分の仕事をまわすにはどのような対策が必要かを、経営陣をはじめ各部門でより具体的に真剣に考えてきたことも、大きかったのではないでしょうか。

 

これからはテレワークがスタンダードに…!BCPで得た知見を参考に、制度の整備へ。

―テレワークスタンダード化プロジェクトについて、プロジェクト化した理由やメンバー構成を教えてください。

 これを機に「社会の働き方はテレワークが標準になるだろう」という、経営陣や現場の総意があり、緊急時ではなかなか整備できなかったITインフラや文書・決裁管理、業務マネジメントなど各分野の規定やセキュリティ、システム面をまとめていくためにプロジェクトが発足しました。
 非常時から平時へと移行するにあたり、緊急時の問題・課題、情報をスタンダード化の際に生かせるよう、メンバーはITインフラを担当するICT室、人事部、オフィス環境整備にかかわる総務部・サポートオフィスなど、BCP委員会の対策本部がそのままテレワークスタンダード化プロジェクトに移行しています。

―テレワークスタンダード化プロジェクトを推進するにあたり苦労したことはありますか?

 テレワークの整備を進めていくに従い、オフィスフロアを減らしてレイアウト変更をするなど、対応する範囲がどんどん増えていきました。一方で通常の業務もあるため、整備しながら運用し、また問題があればそれを解決し…。作りながら問題を解決し、もっと品質をあげていく、さらにスピード感を含めて求められる、という点は大変でした。

 

スタンダード化のその先。出社のメリットとテレワークの課題改善を考える。

―テレワークスタンダード化になり、今後の課題などはありますか?

 テレワークスタンダード化、と言ってもオフィスの出社がないわけではありません。ですから、オフィスに出社する場合は、そのメリットをより感じられるオフィス環境や、会社の方針、福利厚生などを整えていきたいと考えています。

―今後も継続してテレワークをするにはどのようなことが必要だと思いますか?

 業務の効率やコミュニケーションなど、テレワークにおいての課題や要望を継続的に吸い上げて、さらに整備していくことが大切だと思います。
 また、緊急時だけではなく、現在と将来を見据えて、「本当に必要な事か?」としっかりと状況を把握し、身のある整備をしていくことが重要ではないかと考えています。不定期であっても、プロジェクトのメンバーで集まる機会を設け、新たな課題などについて考えていく必要があると思います。

 

※1 全社の事務的なサポートやファシリティ管理を行う部門
※2 サーバおよびネットワーク・基幹システム(テレワーク環境など)の管理、パソコンの貸与、セキュリティ対策などを行う部門

コロナ禍をきっかけに、従業員の働きやすい環境を考える

 当社では、コロナ禍の緊急対応として全社的にテレワークへ移行したことをきっかけに、 緊急事態宣言下の現在、オフィス出社率は1割未満となっています(2021年3月)。  そこで今回、テレワークへの移行にあたって、大きな役割を担った部署へ移行時の苦労や導入後のメリット、課題などについてインタビューを行いました。...

 当社では、コロナ禍の緊急対応として全社的にテレワークへ移行したことをきっかけに、 緊急事態宣言下の現在、オフィス出社率は1割未満となっています(2021年3月)。
 そこで今回、テレワークへの移行にあたって、大きな役割を担った部署へ移行時の苦労や導入後のメリット、課題などについてインタビューを行いました。
 第一弾とし て、勤務制度の整備や導入後に従業員のヘルスケアのフォローをプロジェクトメンバーと連携しながら進めてきた、人事部の鷲頭有沙さんにお話を聞きました。
 テレワークへ移行したくてもなかなか踏み出せない企業が多いと言われる中で、当社が移行できたポイントは何だったのでしょうか?

緊急事態宣言下のオフィス出社率は1割未満。働き方を見直すきっかけに。

―新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、従来のテレワーク制度をどのように見直したのでしょうか?

 当社では以前から月10日を上限とする在宅勤務制度を導入していましたが、介護や育児をされる方の支援として実施しているものでした。しかし、新型コロナウイルス感染症から従業員を守るというBCP対応として、2020年3月から全従業員を対象としてテレワークを導入しています。その際に、業務の見直しを行い、「テレワークでも仕事をすすめることができる」という気づきがありました。働く場所を会社や自宅など自身の状況にあわせて選ぶことで、個人のライフスタイルに合わせた働き方ができ、生産性向上にも繋がるのではないか?と感じました。 
 そのような背景からBCP委員会を中心に5月に「テレワークスタンダード化プロジェクト」を立ち上げ、10月には全従業員を対象に「自分自身の生産性を向上させ、多様な働き方を実現するために、テレワークを新たな働き方として活用してください」というメッセージのもと、テレワークを新たな働き方として選択できる制度を導入しました。
 また、これを機に10時~15時がコアタイムのフレックス制度からコアタイムのないスーパーフレックス制度に変更をいたしました。7時から22時までの間をフレキシブルタイムとし、業務開始時間を早めて夕方早く上がったり、子どもの帰宅時間にあわせて途中休憩をとり、その後また業務を行うなど、テレワーク制とあわせて多様な働き方を推進し、各自のパフォーマンスを発揮しやすい環境の整備を行っています。

―現在のオフィス出社の割合はどの程度でしょうか?

 月のトータル就業日数を分母として、そのうち出社回数が何回あるのか、という算出の仕方でオフィス出社率を計算しています。そのため、出張や営業先に外出している従業員の数値は反映されていませんが、それを抜いても9割以上の方は出社していないと認識しています。

 

苦労も多かったが、テレワーク導入の目的を見失わず、制度設計を行うことが重要!

―テレワーク制度を本格導入するにあたり、苦労した点はありますか?

 たくさんありました(笑)なかでも、細かい制度の内容を決めていくことは大変でしたね。
 制度の目的は「テレワークを活用することで、多様な働き方や生産性の向上を目指す」というものです。毎日出社することでパフォーマンスを発揮できる方もいれば、在宅で仕事をする方が生産性高く働ける方もいます。それを考えた上で、自宅以外の勤務場所をどこまで許容するか、その場合の条件をどう設定するかなど、テレワーク制度のルール決めについては経営層へヒアリングや、全社アンケートの結果を参考にしたり、人事部内、担当役員との検討をすすめ、ある程度余裕をもたせ制度設計を考えました。
 具体的には、テレワークにおける勤務場所を自宅、自宅以外の居宅、その他場所と区分し、「情報セキュリティが担保されていれば可とする」ことにしました。出社条件も、目安としては月に1~2回というメッセージは出してはいますが、必須ではありません。あくまで制度導入の目的にそって、ある程度従業員が選べるように、制限をかけすぎず、かつ、リスクを担保しながら設計をしたところが工夫したポイントだと思います。

―導入に反対の意見はありませんでしたか?

 経営層の意向もあり、また経営層とBCP委員会との合意を得てすすめており、会社として方針が決まっていたため、導入に対しての反対意見はありませんでした。「テレワークになるなら、私たちの事業/部門はこのように対応しなくてはけないよね」というような感じで、各部門で積極的に検討してくれていましたね。

 

テレワーク導入のメリットは、自分が最も活躍できる場所を選べること!

―テレワーク化によるメリットはどのようなものでしょうか?

 自分が一番働きやすくパフォーマンスを上げられる、活躍できる場所を選べるようになったというところがメリットだと思います。
 時間が有効に使えるようになった事はもちろんですが、一人暮らしの人が実家で一定期間、家族のサポートを受けながら勤務できたり、介護をしている従業員が遠方の実家と行き来しながらテレワークを活用したり、エンジニアからは集中して作業でき仕事がしやすくなったという声もあがっています。
 実際に「生産性があがっているか?」「ワークライフバランスが向上しているか?」については定期的にデータをとる必要があると考えているので、その点はモニタリングを継続的に実施していく予定です。
 また、人によってはテレワークがあわないという人もいると思います。緊急事態宣言があけて出社とあわせて活用することで、新たな問題点やメリットがみえてくると思いますので、それらを改善していくことで、もっとうまく活用できるようになるのでは、と考えています。

 

メンタルの不調や労働時間の管理。テレワーク導入で見えてきた課題とは?

―テレワーク化によって生じた課題があれば教えてください。また課題の解消にむけてどのようなことをされていますか?

 1点目はメンタルヘルス不調者の対策です。
 メンタルヘルス対策についてはマネジメント層からの意見も含め、孤独感や健康状態に課題があることが分かっており、改善策として、個人でセルフケアができる環境づくりと組織マネジメントの強化を実施しています。
 個人に向けては、保健師相談の相談窓口を明確化し定期的に周知を行ったり、心身の健康やセルフケアなどに関する情報発信や、コミュニケーション施策として社長をはじめ経営層と従業員が対話できる場としてオンラインバーなども開催しています。
 管理職に向けては、オンラインの場合のマネジメント実施方法の研修や、ストレスチェックの結果から自部門の課題を把握するための研修などを行っています。
 また、2020年度の新入社員は、オフィスに出社して仕事を行うことがなかなかできないため、交流の場を持つ必要があると考え、定期的にオンラインによる懇親会を実施するなどのフォロー対策も行っています。
 2点目は新しい働き方によって出てきた、労働時間の適正化対策です。自宅でいつでも仕事ができるため、自分で働く時間を管理しなければ長時間労働に繋がってしまいます。また、テレワークにより通勤がなくなったことやスーパーフレックスで勤務時間の調整ができるようになったことで、休暇をとらなくても自身のやりたいことができる時間が増え、年次有給休暇の消化率が下がってきています。
 解消策としては、毎月の残業時間の推移や、年次有給休暇の取得状況をチェックして、該当者とその上長にアラートメールを送っています。また、上長が部下の労働時間が把握しやすくなるシステムも導入しています。

―このような課題はどのように吸い上げているのですか?

 定期的な調査として全従業員対象で昨年7月にテレワークの勤務状況の現状把握と課題把握のための調査を行い、また、1月のストレスチェックの中にテレワークに関する設問も追加するなどして、心身の不調とテレワークの関連性の分析ができるように取り組んでいます。

―テレワーク移行後に従業員から要望や不満などはあがりましたか?

 ワーケーションや外国籍の社員からの海外でのテレワークの要望はありますが、それに伴うリスクや効果を考えて、慎重に検討して取り組んでいかなければならないと思っています。

 

迅速なテレワーク移行のポイントは、経営層と従業員が足並みを揃えること!

―社会的にテレワーク化がすすまない企業が多いと言われていますが、当社がスムーズに移行できた理由とは何だと思いますか?

 テレワーク制度導入に対する経営層の強い意向があったことと、2020年7月にテレワークの勤務状況の実態把握のための調査を実施し、調査結果からテレワーク制度導入に関する影響や、課題、メリットなどをデータで把握し経営層に提案できたことがポイントだったと感じています。
 また、テレワーク移行に向けて、現場のなかで業務の見直しを実施できていたからこそ、スピード感をもって対応できたのではないかと思います。

―テレワーク制導入を考えている企業に対してアドバイスがあれば教えてください。

 テレワークが自社にとってどのような影響があるのかは、その会社の事業や仕事内容によって違い、一概に上手くいく方法はないのかもしれません。
 全社規模で急に取り入れることは難しいと思うので、最初は協力してくれる部門などを募り、実験的に取り組んだ結果のデータから、課題やメリットを探って成功事例をつくる。そして定期的に経営層に報告するなど、地道な活動を積み重ねて導入をすすめていくことが望ましいのではないでしょうか。