“育児の大変さが「わかったつもり」から「わかった」に変わった” 双子育児に奮闘した男性社員が語る育休のススメ


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Profile

育休取得者:中村 拓貴

2012年に新卒で開発職として入社。『music.jp』の楽曲データ管理など、主にサービスのバックエンドシステムの開発を担当し、現在は決済システムmopitaのオフショア開発のマネージャー。

2018年9月に双子の男児が生まれ、6カ月の育休を取得。

妻は同期入社のエムティーアイ社員で、2020年4月復職を予定している。

 

 厚生労働省の調べ※によると2017年の多胎児の分娩件数は約9,900件で、出生数全体の1.04%となっています。多胎児は単胎児に比べて低出生体重児となる割合が高く、同時に2人以上の妊娠・出産・育児を行うことによる負担が大きいなど、 多胎児ならではの困難に直面することもあるようです。
 育児休業制度を取得した男性社員を紹介する本企画の第三回目では、双子の育児を行うため 半年間の育休を取得した社員に育休中の様子や妻の復職に向けた計画などを聞きました。

※出典:厚生労働省「多胎児支援のポイント」:https://www.mhlw.go.jp/content/000509321.pdf

毎日子どもに接して、体験するまで育児の大変さがわかっていなかった

双子ということで、育休取得は早めに検討を始めたのでしょうか?

 実は、妻の妊娠中は育休取得の検討はしていませんでした。
 妻は里帰り出産で2018年9月に出産し、年末までは実家で育児をしていたので、特に心配はしていませんでした。しかし、東京に戻って両親からのサポートが無くなることを考えると、「ひとりで育児ができるのか?」という不安があると妻から相談され、育休を検討し始めました。
 検討を始めた頃、私が主担当の案件が進行し、2人体制で業務を行っていたこともあり、「1人抜けてしまうのは難しいのではないか…」と思っていました。
 今考えれば、上司に相談すれば業務の調整は可能だったと思うのですが、自分自身勝手に「今は難しいかも」と思い込んでおり、なかなか育休の相談に踏み出せませんでした。

 

育休取得を決断したきっかけは?

 里帰り出産だったため、妻は毎日の子育てがどれくらい大変か良くわかっている一方、私は月に1回程度2~3日の間、妻子の元に行き、その期間だけ育児を少し手伝うくらいでした。もちろんその期間「大変だな」とは思うのですが、毎日育児の様子を間近に見るのとは違いますし、見ているのと実際にやるのでは全く違います。
 妻が戻る前も「双子の育児は大変そう」という漠然としたイメージはありましたが、それでも「自分が育休を取らなくても何とかなるかな」と思っていました。

 

 しかし、妻が里帰り出産から戻り、毎日子どもと身近に接するようになることで育児の大変さを目の当たりにし、妻からも育休を取ってほしいと要望があってはじめて育休取得を具体的に考え始めました。
 その頃、業務内容が変更になることが決まり、そのことも後押しとなって、2019年3月から3カ月の育休取得が決まりました。
 業務内容が変わるタイミングだったこともあり、次の担当者に業務の引継ぎもしっかりできて、思い残すことなく休みに入れたのは良かったです。
 上司からは「育休から戻ってきても、自身のキャリアパスに合った席を用意しているよ」と快く送り出してもらい、安心できました。
 また人事からは3カ月で復帰が難しければ延長も可能と聞き、「ダメだったら延長しよう!」と前向きな気持ちで育休に入りました。

 

「双子は2倍大変」どころの話ではない!?

育休中の双子育児はどうでしたか?

 育休取得前にも子育て について妻と話す機会はありましたが、想像以上に2人同時に育児をするのは大変でした。
 双子だけでなく、年子 のお子さんがいる家庭にも当てはまるかもしれませんが、昼寝や夜の寝かしつけでは、子どもがお互いに起こし合ってしまったり、ご飯は1人が食べている間もう1人も見ていなければならないことなどが、 特に難しかったです。
 「双子だと2倍大変そう」と思っている方 が多いかもしれませんが、それはたとえば1人が寝たら次にもう1人寝かしつけて…ということがうまくいった場合であって、実際は子ども同士がお互いに干渉しあって何も進まないことがよくあり、2倍以上に大変でした。笑
 また双子なので、服・ミルク・ご飯などなんでも2倍必要ですし、どちらかの子が病気になると、もう一方も病気をもらってしまうこともあります。今年の夏は上の子が病気をもらってきたのをきっかけに、家族全員ダウンしてしまったこともありました。

 

 育休中は基本的に、親ひとりに子ひとりの1対1で対応することが多く、自分の時間も取れませんでしたし、妻との時間もとても少なくなってしまいました。もし1人であれば寝た後の時間は、妻と色々話すことができたのではと思うのですが、その時間を作るのは難しかったです。妻とは、会話を通して気持ちのすり合わせができないことによって、ストレスが溜まってしまい、大きなものではありませんが喧嘩になったこともありましたね。
 育児を楽しみながら育休期間を過ごすことができましたが、実際にやってみなければわからないことばかりで、慣れるまでは戸惑うことも多かったです。たとえば 、「哺乳瓶の洗剤は毎日変えなければならない」など細かい対応も必要で、働きながらの育児では見えていなかった課題 が多く、驚きました。
 その課題の全容を把握して、育児の大まかなタイムスケジュールがわかってくると、妻と協力して育児を行えるようになりました。その状態になって、やっと妻の育児ストレスも和らいでいったようです。

 

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子どもの入院や1人育児の練習など復職には大きなハードルが…

育休を3カ月から6カ月に延長した理由を教えてください。

 育休3カ月目くらいの頃、下の子が体調を崩し入退院を繰り返していて病院にかかることが多くなっていたのですが、かかりつけの病院は感染拡大を防ぐなどの目的から、小学生未満の子どもは入れない決まりでした。そのため、上の子を連れてお見舞いに行けないので、親のどちらかが上の子を見ていなければならず、物理的に1人では対応できませんでした。
 下の子が入院した時は夜中付きっ切りで様子を見て、日中に上の子を連れて病院の近くまできた妻と交代して自宅に帰り、自身の身の回りの支度や上の子の世話もして、また病院に戻るような状況でした。さらにその頃、上の子が腹ばいで移動するようになり、益々目が離せなくなってきたこともあり、「今復帰したらどうなってしまうんだ!?」というくらい大変な状況でした。
 また、私が復帰後に妻が1人で育児をするための準備も十分にはできていなかったので、もう3カ月育休を延長することにしました。

 

育休延長からの復職に向けてどのような準備をしましたか?

 育休に入ってからの6カ月で子どもたちも1歳を迎え、だいぶ成長しました 。復帰予定時期が近づいてきた頃には、機嫌よく過ごせる時間も長くなり、生活のリズムもできて、少しずつですが、妻のみで育児を行う練習もできるようになってきました。
 復職に向けた 準備の一例として、1人で2人をお風呂に入れる練習をしました。育休中は子どもをお風呂に入れる担当と、お風呂の後のケア・着替えをする担当に分かれていたのですが、それを妻 1人でやるために、2人同時に入れてみたり、待っている子はテレビで気をそらさせてその間にもう1人をお風呂に入れるなどの方法を試みました。
 実際に復帰してみると、意外と子どもの体力が夜まで持つ日もあり、お風呂と寝かしつけは帰宅後に妻と一緒にできることも増えてきました。

 

来年4月に奥様も仕事に復帰予定とのことですが、今後どのように子育てに取り組みたいですか?

 これまでは、下の子は少し体が弱かったこともあり、なるべく家に居られるようにして、家族で過ごす時間が多かったのですが、今後は保育園に行って他の子や年上の子たちとも触れ合い、色々な経験を通じて心身ともに成長してほしいです。
 妻は可愛い子どもたちの成長を毎日見届けたいという葛藤もあるようですが、やはり外の世界での経験を通じた成長を見守っていこうという方針で進んでいます。

 

 妻の仕事復帰後の業務と育児の両立に向けては、「いかにうまく生活リズムの確立ができるか」がカギになると思っています。子どもが保育園に通うようになると送り迎えの時間も発生しますし、今は育休中で家にいる時間の長い妻がメインで家事を行ってくれていますが、それも難しくなる思うので「掃除や洗濯はいつやるのか?」など課題は出てきます。お互いに連携して、両立できるようにしていきたいです。20191113_nakamura_3

双子の妊娠・出産・子育てを通じて気づいたこと

 

日本では100人に1人の割合でしか経験することがない多胎児の育児を通じて感じたことや気づいたことはありますか?

 多胎妊娠は、母子ともにリスクが高いことを当事者になって初めて知りました。多胎妊娠は妊娠中・産後に何らかのトラブルが起こる可能性が高いと言われていますが、妻も妊娠中に切迫早産になり入院することになりました。
 妻が入院した際には傷病休暇という形で産休と繋げて休みを取ることができましたが、多胎でも単胎児と制度が変わらないので、多胎の場合は産休や育休を長めに取得できるなど何かしら多胎妊婦向けの制度があっても良いのでは?と思います。
 そして、ぜひ男性も育休を取ることをお勧めします。やはり、見ているだけと経験するのでは全然違うので、男性の育休がもっと普及すると良いなと思います。
 育休を取りやすくするためには職場での体制づくりも重要だと思います。今回育休を取得する前の私のように、2人体制で深夜対応もあるようなチームだと、誰かが長期休暇を取ることが想定されていないので、育休は取りにくくなります。
 解決策として、単純な話ですが3人体制にするなど誰かが欠けても業務が回るような柔軟性のある状態になっていると、長期休暇やメンバーの急な休みにも慌てずに対応ができて良いのではないでしょうか。

 

中村さん自身、育休を通じて考えはどのように変わりましたか?

 育児の大変さが「わかったつもり」だったのが、「わかった」に変わったのが一番の変化です。育休を取り、育児を経験して本当に良かったと思っています。

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