聖マリアンナ医科大学病院の挑戦。 生殖医療センターにて、不妊治療のオンライン相談がスタートする背景とは?

   オンライン診療事業を展開するエムティーアイのグループ会社(株)カラダメディカは、7月2日(木)より産婦人科に特化したオンライン診療サービス『ルナルナ...

 

 オンライン診療事業を展開するエムティーアイのグループ会社(株)カラダメディカは、7月2日(木)より産婦人科に特化したオンライン診療サービス『ルナルナ オンライン診療』を、聖マリアンナ医科大学病院へ提供しています。同病院では現在、『ルナルナ オンライン診療』を活用し、まずは不妊治療のオンライン相談を開始しています。

 今回、聖マリアンナ医科大学病院の産婦人科医長である洞下由記先生に、不妊治療のオンライン相談導入の経緯や、今後臨床現場でのオンライン相談・診療の活用により期待できる効果などについて詳しく伺いました。

 

 

洞下先生のプロフィール

洞下由記

聖マリアンナ医科大学 大学病院 助教 

大学病院産婦人科医長

平成14年聖マリアンナ医科大学医学部卒

専門/担当分野:生殖内分泌、周産期、がん・生殖医療

日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医

 

●インタビュー日:2020年6月25日

 

あらゆる患者にオープンな生殖医療センターだからこそ、不妊治療にも様々な選択肢が存在。
聖マリアンナでの治療を求めて、全国から患者が訪れるケースも。

聖マリアンナ医科大学病院の生殖医療センターの特徴を教えてください

 聖マリアンナ医科大学病院 生殖医療センターの特徴として、一般不妊から難治性不妊まで幅広く診療している点が挙げられます。大学病院での治療のメリットは選択肢が多いことで、例えば薬物療法が無効の多嚢胞性卵巣症候群や子宮内膜症に対して腹腔鏡下手術が可能であったり、卵管が狭窄・閉塞している患者さんには卵管形成術を行ったりなど、体外受精だけではなく自然妊娠も諦めないという姿勢を大切にしています。精神病や糖尿病などの合併症がある方や、がん治療後の方、難治性の患者さんも多いため、そのような疾患との治療の連携は非常にスムーズで、何かあったときは他の科も含めてすぐに対応ができます。その点ではすべての人にオープンであると言えますし、患者さんの安心につながっていると思います。
 基本的には病院近くにお住まいの患者さんが多くいらっしゃる地域密着型の病院ですが、特殊外来としてがんの治療前の妊よう性温存治療(卵巣組織・卵子・胚・精子の凍結保存)や早発卵巣不全の患者さんに対する生殖医療が当科の強みでもあるので、そのような患者さんは情報収集をされて全国から訪れますね。疾患などの関係で他のクリニックでは相談できない事情がある場合も、一度我々の生殖医療センターへ相談してみる価値はあるかと思います。

 

聖マリアンナ医科大学病院 生殖医療センターについてはこちら:http://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/

 

オンライン相談によって患者の負担を減らしたい。不妊治療領域では、将来的にさらにオンライン相談・診療が活躍!

これまで対面で行っていた不妊治療の相談を、今回オンラインでも実施すると決めたきっかけを教えてください。

 対面診療だとどうしても通院や待ち時間の負担が発生してしまいますので、そこはいつも患者さんに対して申し訳なく感じていました。特に大学病院は重症の方がいればその患者さんの処置により30分や1時間は他の対応が止まってしまうため、どうしても調整がつかず急にお待たせしてしまうケースも出てきてしまいます。そのような点でも、通院と待ち時間の負担を減らせるオンライン相談・診療は個人的に始めたいと思っていました。不妊治療はお話を聞くだけで解決策を提示できる場合もあるため、オンライン診療やオンライン相談との親和性が高い領域だと思います。

 

オンライン相談では、どのような効果を期待していますか

 将来の妊娠や不妊に関して一人で悩んでいる患者さんのサポートができればと思っています。また、産婦人科の受診をためらっている方も多いと聞きますので、まず相談で安心していただいてから、病院の受診率向上につなげていきたいと思います。今はインターネットやSNSなどで様々な情報があふれ、自分にあった情報を正しく選ぶことが難しい時代です。なかには誤った情報も見受けられるため、情報に惑わされる人を減らすためにも、オンライン相談の活用によって患者さんに直接正しい情報を発信していきたいですね。
 30分という限られた枠の中でお話を聞くことになるので、患者さんにも事前に相談したい内容を整理しておいていただければ、とても効率の良い時間になると考えています。決まった時間に開始できて患者さんの待ち時間がないことは、患者さんにとって最大のメリットですね。一方で、例えば子宮筋腫の有無や卵巣の状態などは診察しないとわかりません。そのような点は対面診療とうまく使い分けて解決していきたいと考えています。

まずは気軽にオンライン相談を!
臨床現場でのオンラインツールの活用で、患者の生き方の選択肢も広がる世の中へ。

今後、不妊治療領域でオンライン相談やオンライン診療は広がっていくと思いますか。

 今後は全国的にも広がっていくと考えています。特に治療と仕事を両立されている方は本当に大変だと思いますので、そのような患者さんにはオンライン相談・診療が重宝されると考えています。医師の数の問題もありますが、例えば夜間の診療を開放するなど、オンラインによって可能になることは多いのではないでしょうか。
 不妊治療の開始が早ければ早いほど年齢的な不妊のリスクが軽減し、体外受精を必要としないケースも増えていくと考えます。妊娠だけではなく働き方の面でも、その人らしい人生を歩める選択肢を提供するという面でオンライン相談・診療を活用していただきたいですね。

 

不妊治療や相談を検討されている方へ、メッセージをお願いします。

 まずはぜひ気軽にご相談ください。実際に病院を受診する前に、悩みや不安を整理し解決しておいた方が適切な病院選びにもつながりますし、受診のハードルが下がると思います。そのためのツールとしてオンライン相談をぜひ活用して欲しいですね。不安なことを一人で考え込むとどうしても行き詰ってしまいますし、家族や友人に相談してもなかなか良いアドバイスをもらえなかったり参考にできなかったりすることもあると思いますので、私たち専門医を頼っていただければ嬉しいです。こんなことを相談してもいいのかな、ということでも、気軽にご相談ください。

 

聖マリアンナ医科大学病院でのオンライン相談の詳細・予約はこちら:https://telemedicine.lnln.jp/hospital/c0aa2ab6-03bc-4ae9-ab9a-e2b39acd7fbd

 

 

 

 

 

 

現役医師が語る、オンライン診療から始まる未来のクリニックのかたち

   (株)エムティーアイと(株)メディパルホールディングスの合弁会社である(株)カラダメディカは、オンライン診療システム『CARADA...

 

 (株)エムティーアイと(株)メディパルホールディングスの合弁会社である(株)カラダメディカは、オンライン診療システム『CARADA オンライン診療』『ルナルナ オンライン診療』を運営しています。
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により急速に導入が広がるオンライン診療は、遠隔にいながらも医師の診療や薬の処方までを受けられるため、感染症の拡大抑止や感染リスクを低減するだけでなく、物理的な距離や通院時間の面でもメリットの大きい取り組みとしてこれまでの生活様式を変える新たなツールになると推測されます
 今回は、オンライン診療をはじめ、これからますます変わっていくであろう医療機関のあり方について、(株)カラダメディカの代表取締役であり現役の医師でもある菅原誠太郎氏のインタビューをお届けします。

 

 

菅原 誠太郎

株式会社カラダメディカ 代表取締役

聖マリアンナ医科大学 助教/大学病院救命救急センター 医長

2010(平成22)年 福井医科大学 医学部卒

2018(平成30)年 慶應義塾大学大学院 経営修士課程修了

専門/担当分野:救急集中治療

日本救急医学会 救急科専門医

 

 

 

●インタビュー日:2020年5月19日

「生かせる命をきちんと生かせる医者になりたい!」 救命救急医師としての原点とは?

―現役の医師としてのお仕事内容を教えて下さい。

 医師歴は11年目で、現在は聖マリアンナ医科大学の救命救急センターに勤務しています。
 医師としての仕事は、救急車で運ばれてくる重症の患者さんを診療することがメインです。ただ、夜間に関しては軽傷の患者さんから心肺停止の状態の患者さんまで幅広く診ています。
 基本的に病院はどのような患者さんも受け入れられるよう間口をオープンにしていますが、その中には入院が必要な患者さんもいれば他病院で対応が必要な方もいるため、個々の状況を適切に見極め、行先を判断しているという意味で、救命救急は病院の入り口を担っている場所だと考えています。

 救命救急の道を選んだのは、「生かせる命をきちんと生かしたい」という思いがあったからです。
 幼い頃に地元の小児科の先生がどんな病気やケガでも診てくれたという自身の原体験から、私の中で、医者=基本的に何でも相談に乗って処置してくれる存在、というイメージが強かったため、自身の専門外の患者さんは診られない医師にはなりたくないとずっと考えていました。最近はスペシャリティが高いほど医師としての価値も高いと考えられるケースが多いことや、専門医以外は診ない方が安全という考えももちろん理解できます。しかし、例えば都心ならそのようなスタンスでも問題ないかもしれませんが、医者の数が限られているような田舎であればその対応では難しくなります。そう考えた時、医師免許を持っている限りは、目の前に苦しんでいる患者さんがいれば、どのような症状であっても命を生かせられるよう、最低限の応急処置を行ったうえで専門医のところへ届けられる医者でありたいと思い、医師の中でもジェネラリストとして救命救急の医師になりました。

病院経営に対する問題意識から、「医師」と「企業家」の二足のわらじを履くことに

―医師でありながら、IT企業であるエムティーアイグループの(株)カラダメディカの事業に携わるようになった経緯を教えて下さい。

 研修医として働き始めたころから、病院の経営は非常に効率が悪いということを実感していました。実際、全国の病院の中でも黒字化しているところは少ないと思います。
 初期研修中は、朝から晩まで働いていました。その生活が2カ月ほど続いた頃には「このままでは自分が死んでしまう」と感じたほどです。しかし、自分を含め医師が必死に働いているにもかかわらず、病院の経営状況が悪いということを知り、その状況に疑問を抱きました。そこから院内の業務を注視してみると、病院の中には効率が悪いことが多々あることに気が付きました。
 例えば、同意書は本来オンライン上のサインで良いのですが、それを電子カルテから印刷し、印刷したものをもって患者さんに説明し、患者さんがサインしたものを再度スキャンして電子カルテに取り込んでいます。出力した同意書をもう一度取り込むという無駄な作業が発生している上に、スキャンするために事務員がいることもありました。
 院内の実態を把握していくにつれて、このままでは日本の病院経営が危険だという意識が芽生え、このような状況を解決し病院を変えるためには経営を学ぶ必要があると感じ、救急の専門資格を取得した後に慶應義塾大学のビジネススクールに通い始めました。ゆくゆくは病院の経営企画のような部門でも貢献できればと考えていたので、医療政策のゼミに加えマーケティングのゼミも選択していたのですが、そこでエムティーアイの事業と出会い、カラダメディカのオンライン診療事業を知りました。当初は事業をするという視点はなかったのですが、企業が保有するICTの力で病院業務を効率化できる可能性に魅力を感じ、代表取締役として事業を推進していく決断をしました。

現場を知る医師が手掛けているからこそ、『CARADA オンライン診療』は臨床現場の声を生かしたサービスに発展!

―現役医師だからこそ事業に生かせているポイントとは、どのような点でしょうか。

 私は、オンライン診療は、慢性疾患を抱え定期的に薬の処方が必要な患者さん(特に働きながら治療をしているような世代の方)にとって、選択肢のひとつとしてあるべきだと考えています
 オンライン診療のシステムを提供する側として、現役医師であることが最も生かせるのは、やはり“現場感”です。私は普段の診療でも電子カルテを利用していますし、医療事務の方などともよくコミュニケーションを取っているため、現場で今どのような問題が起こっているか、医師やスタッフの業務がどのような状態で上手く機能しているのかどうかということも把握できています。そのノウハウや知見を事業にも生かせる機会は多いですね。
 また、今回の新型コロナウイルス感染症のように外部環境が大きく変わっているときも、今後の状況の変化が予測しやすいというのは事業を進めていくうえでも大きく、新たな機能開発やサービスの質の向上などにつながっていると思います。 

―『CARADA オンライン診療』の特長を教えてください。

 製品の最大の特長は、導入後の充実したアフターフォロー体制です。医療機関には、ITリテラシーが高くない人も多いため、システムIDだけ渡しても活用できなかったり、推奨環境などを記載してもその通り使えなかったりということが往々にして起こります。ただ、そのような場合でもある程度フローを周知して何度か利用経験を積めばその後は継続して活用できるようになるため、最初の1カ月は全国の拠点に在籍する営業担当者が積極的にアフターフォローを行うことで、安心してサービスを使っていただく環境の整備を図っています。導入スピードも早く約5営業日で利用が開始できるため、このような非常時で早急な導入が必要となる場合にも迅速に対応が可能です。
 また、サービスの仕組みも非常にシンプルで、全てブラウザで完結している点も評判が高いですね。利用者からするとアプリのダウンロードもWEBの設定も必要だとサービスを使うまでにかなり手間がかかってしまうため、ブラウザだけで利用できることが喜ばれています。

エムティーアイグループだからこそ実現できる、次世代スマートクリニック構想とは?

―今後のサービス展望をどのように考えられていますか。

 オンライン診療単体のシステムとして考えると、これ以上の機能は必要ないと思っています。

ただ、単なる「オンライン診療システム」ではなく、クリニックの「ソリューション」として考えたとき、同じエムティーアイグループの、電子カルテのシステムを手がける(株)クリプラや、クラウド薬歴システム『Solamichi』を提供する(株)ソラミチシステムとの連携が鍵になってくるでしょう。

 

 

 今はクリニックから薬局へFAXで処方せんを送る場合が多いのですが、それは非常に面倒で手間もかかるため、将来的には電子処方せんシステムができるのではと考えています。そうすると、クリニックでは『CARADA オンライン診療』で診療を行い、クリプラの電子カルテにて処方せんを記録すると、そのままクラウド薬歴『Solamichi』に情報が送られ薬局にて薬の処方が可能となるため、患者さんの受診スタイルも変容させるクリニックのトータルソリューションをエムティーアイグループで提供できるようになります。
 このシステムを実現するには法改正も必要となりますが、医療機関にとっても患者さんにとっても手間の削減になるなどメリットが大きいため、この次世代スマートクリニック構想をエムティーアイグループの力を集約して実現させるべきだと思っています。医療機関にとって利便性の高いシステムを提供することが、自ずと患者さんからも選ばれることへ繋がります。幅広いクリニックソリューションを連携させながら提供できるのはエムティーアイグループ独自の強みのため、Afterコロナ・Withコロナの社会におけるクリニックの新たなあるべき姿を示すことをゴールとして見据えています。

「オンライン診療」は今後も選択肢のひとつとして活用されるべき仕組み

―現在新型コロナウイルスの感染拡大防止策の一つとしてオンライン診療は広がっていますが、今後、オンライン診療はどのように発展していくと考えられていますか。

 Afterコロナ・Withコロナの社会においても、慢性疾患のアフターフォローや定期通院に関してはオンライン診療で充分だと思います。今回の新型コロナウイルス感染症以前から感じていたことですが、インフルエンザなどが流行している時期に基礎疾患などを持つ高齢者の方がわざわざ対面で受診に行くのはリスクでしかないです。それにも関わらず「薬をもらわないと」という日本人の真面目さもあり、病院まで足を運ぶ人が多いため、そのような状況はこれを機に変わっていくべきだと思います。
 ただ、私の専門である救命救急はもちろん、慢性疾患であっても普段と違う症状が出た場合や病状が変わっていくような疾患にはオンライン診療は不向きだと考えています。例えば急な頭痛や胸痛などの症状がある場合は、くも膜下出血や心筋梗塞の疑いなども視野に入れ診療する必要があるため、オンライン診療は適さないと思っています。

―医療機関がオンライン診療システムを導入する意義について、どのように考えられていますか。

 医師によっては、オンライン診療による誤診の不安などもあるようですが、そこは患者さんへの十分な説明ができているかどうかで変わってくると思っています。救急の場合でも、夜中には検査ができない状況などもあり、その場できちんとした診断がつくのはだいたい半分程度です。そのような中でも我々は必ず、帰宅の際に「あなたには○○と○○の可能性があるため、このような症状がある場合は必ず病院に来てください」と説明し、私の場合はその内容を電子カルテにも残しています。指示された患者さんは、その症状があれば、不安なく受診をしてくれます。オンライン診療の場合も、このように考えられる可能性や、受診して欲しい基準を明確に伝えることが誤診などのリスクを軽減するためにも非常に重要だと思います。

 今回の新型コロナウイルス感染症の影響で一般の人々の意識も大きく変わり、通院による感染リスクなどを考える人が増えたため、今後もオンライン診療の需要は高まり定着すると思われます。新型コロナウイルスが終息したとしても、また同様に感染症が流行する可能性は大いにあり、その際患者さんがわざわざリスクの高い対面での診療を受けに病院に行くとは考えにくいです。そのようなときのためにもオンライン診療が患者さんの命を守る選択肢の一つとしてあるべきですし、非常時においても安定した医療環境の提供を継続させることを考えても、医師はオンライン診療ありきで今後の経営を考える必要があると思います。
 今課題である診療報酬に関しても、対面診療と比較してもオンライン診療の結果が変わらないことがエビデンスとして示せるなどのきちんとした実績が出てくれば、今後恐らく変わってくるのではないかと私は考えています。

患者側は、今後オンライン診療とどのように向き合っていけば良いでしょうか。

 患者さんにとってはオンライン診療へのハードルが高いという声も聞きますが、個人的には不安なことがあれば、まずは受診をしてみると良いと思います。実際にオンライン診療を受けてみて、状態を見て医師が経過観察するべきか、来院して検査をすべきか判断してくれると思います。患者さんにとって、移動時間、待ち時間がないなどのメリットは大きいです。さらに現在では感染予防という面からしても、オンライン診療を活用する意義は高いと思います。体調が優れずに悩んだときは、オンライン診療を使ってみても良いと思います。

 

 

 

 

『ルナルナ』ピルモード 監修医インタビュー

 エムティーアイが運営する、ライフステージや悩みにあわせて女性の一生をサポートする健康情報サービス『ルナルナ』は、先日新たに「ピル(OC/LEP)モード」(以下、「ピルモード」)を追加し提供を開始しました。 日常生活に支障を来すような重い月経痛は「月経困難症」といわれ、国内に推定800万人以上の患者がいるとされている女性にとって身近な疾患です。『ルナルナ』は、月経困難症の治療に効果的な低用量ピルの服薬をサポートするため「ピル服薬支援プロジェクト」を立ち上げ、その取り組みの第1弾としてアプリで服薬を支援する「ピルモード」がスタートしました。 今回は、本プロジェクトの監修医であり、長年月経困難症の患者と向き合ってきた東京大学医学部附属病院 産婦人科 准教授の甲賀先生のインタビューをお届けします。     東京大学医学部附属病院 産婦人科 准教授 甲賀かをり先生  ≪経歴≫ 1996年 千葉大学医学部卒業 東京大学医学部付属病院 産婦人科 研修医 1997年、1998年 三井記念病院、国立霞ヶ浦病院(現:独立行政法人国立病院機構霞ヶ浦医療センター) 産婦人科研修医 1999年~2002年 大学院 2000年 産婦人科専門医取得 2003年 武蔵野赤十字病院産婦人科医員 2004年 東京大学医学部付属病院 産婦人科 助手(その後助教) 2006年~2008年 豪州プリンスヘンリー研究所、米国イエール大学留学 2008年 帰国、留学生や大学院生の指導を開始 2011年 生殖医療専門医、婦人科内視鏡技術認定医取得 2013年 東京大学医学部付属病院 産婦人科 講師 病棟医長 2014年 日本内分泌学会 専門医・指導医取得 2014年 東京大学医学部付属病院 産婦人科 准教授   ●インタビュー日:2019年10月3日 長年月経困難症の治療と啓発に携わってきた医師として、医師と患者、それぞれが感じている“ピルへのハードル”を低くしたい ―どのような背景で月経困難症の啓発活動をされているのでしょうか。  私は1996年に医師になり、1999年から4年間大学院で子宮内膜症に関する研究をしてきました。その頃日本では避妊用の低用量ピルが世の中に出たばかりでしたが、海外では既に子宮内膜症や月経困難症に低用量ピルが効果的だということが論文などで証明されていました。そのため、子宮内膜症や月経困難症などの症状で来院する患者さんには充分に説明を行ったうえで、希望する人には当時は適応外使用だった低用量ピルを処方していました。そのような時代が10年ほど続き、その後、時代の波もありピルも段々と世の中に広がり始め、月経困難症や子宮内膜症に関する啓発など、社会的な活動に参加する機会も何度か頂きながらここまで来ました。臨床現場での課題などを肌で感じる経験も多く、ピルの処方、服薬には患者さん側にも医師側にも越えなければならないいくつものハードルがあることを実感しています。   ―ピル処方において、医師が感じるハードルとはどのようなものでしょうか。  医師側のハードルには、情報不足や患者さんへの説明の困難さがあると考えています。 産婦人科医と言っても様々で、お産がメインの先生もいればがん治療が専門の先生もいるため、このようなピルの啓発に関する取り組みがまだまだ届いていない人もいます。そのため、重い月経痛を抱えた女性が勇気を出して婦人科を受診しても、そこで先生に「ピルなんて副作用があるからやめた方が良い」などと言われた、というようなことも少なくありません。また、低用量ピルにベネフィットとリスクどちらも存在しているのも事実で、医師の中には患者さんが想定外の副作用で苦しむことを懸念している人も多いでしょう。患者さんへの薬剤についての説明のコツや、医師側が抱える懸念を克服していくためのヒントを提供するなど、もっと医師に向けての声掛けを強化し、先生方のハードルを下げるお手伝いができないかと常々考えています。   ―ピルの服薬に関して患者が感じるハードルとはどのようなものでしょうか。  患者さんが感じるハードルには大きく3つの段階があると考えています。 まず1つ目が、病院を受診するまでのハードルです。日常的に月経痛を抱えている女性は多くいますが、その状態が当たり前になりつつある中で、月経痛を病気と疑って婦人科を受診することは簡単ではないと思います。2つ目に、医師に症状を伝え、ピルの選択肢を提示されたときに「服薬を決断する」というハードルが生まれます。薬剤についての正しい知識がなければ、“ピル=避妊”だとか、“性に奔放な女性が飲む薬”というイメージだけが先行してしまい服薬を決断できない人もいます。また、本人に抵抗がなくても、保護者がネガティブなイメージを持っているがために薬を受け取らせないケースもあります。そして3つ目に、服薬をきちんと継続する、という段階でのハードルです。ピルは、飲み始めの初期に起こりやすい吐き気や不正出血、むくみ、血栓への恐怖などから、1錠でやめてしまう人が沢山いることが現実です。これらのハードルをなくすためにも多方面からのアプローチが必要となり、今回の『ルナルナ』との取り組みもその一環だと捉えています。  性教育に変革を。包括的な知識を若年層に伝える基盤を構築したい ―女性の健康について正しい理解を深めるために、学校教育はどうあるべきでしょうか。  根本的なアプローチを考えれば、学校教育の変革が必要だと思います。 昔から、性教育においては「いかに避妊するか」というテーマの議論は進んできた一方で、例えば「何歳まで子どもを産めるのか」、「まだ妊娠を望んでいない時期にどのようなケアをしていれば、実際に子どもを望んだときに描いているライフプランを実現できるのか」、ということを考えさせる機会が少ないのが現状ですよね。勿論、若年層の妊娠が問題になることもわかりますが、それだけがフィーチャーされすぎて、家族を持ちたいと思ったときのために必要な知識が充分に備わっていない、それを伝える基盤が欠落しているということは大きな課題です。また、少女が月経痛や月経不順を抱えていたり、無理なダイエットなどにより無月経になってしまったときに、家族や婦人科に相談すべきだという内容が教科書には載っていません。そのため、異変に気が付けるのは一部の意識の高い部活動の顧問や養護学級の教員だけで、非常に属人化した状態になっています。  私も養護の先生と性教育について話し合ったり、保健体育の教科書に記載する内容をどうすべきかを文部科学省の関係者と検討する機会があったり、学校教育に関しては強い関心を持っています。しかし、学習指導要領は10年に1度程度しか変更されないため、今すぐ抜本的な変化を望めるかというと難しく、先は長いと思います。ただ、性教育の進化を真剣に考えている医師は沢山います。  就労環境の整備はもちろん、若年層から正しい情報にたどり着ける仕組みづくりを ―ピルへのハードルを下げるための動きは既にあるとは思いますが、あと一歩先に進めるためにはどのようなことが必要でしょうか。  中高生、大学生、働く女性、それぞれに響くアプローチは異なりますので、ひとつの手段ではなかなか浸透しないだろうと考えています。例えば働いている女性は、病院に行きたくてもなかなか「月経」を理由に会社を休みにくいですよね。これが月経ではなく、目に見えるケガや不調であれば周りの人も病院へ行くように声をかけてくれると思いますが、月経痛の苦しみは本人もあまり表に出せず、月経が終われば症状もなくなってしまうため、後から「先月の月経痛がひどかったから」と受診できる人は少ないと思います。さらに、月によっては症状の重さも異なり「今月は軽いから大丈夫」などと様子を見ているうちに半年が経過していたというケースも少なくないため、症状が表れたときに堂々と休んで医療機関を受診できる環境整備が非常に大事だと思います。  若年層に関しては、月経にまつわる情報をスマートフォンやSNSで確認している人が圧倒的に多く、母親や学校の先生に相談する人は少数派のようです。ただ残念なことに、それらしいキーワードで検索しても、きちんとした医学的エビデンスに基づいた記事やサイトにたどり着ける人は少なく、診察をしていても、著名人のブログや民間療法のサイトなどに行き着き、そこに書いている情報をそのまま信じてしまう人があまりにも多いように見受けられます。情報があふれて正しい取捨選択ができないがために、診察に訪れるまでに遠回りしてしまうのだと思いますが、だからこそ、正しい情報が掲載されたサイトにきちんとたどり着けるような仕組みや工夫が必要だと考えています。   産婦人科にとって『ルナルナ』は手を組むべきパートナー ―そのような課題があるなかで、『ルナルナ』への印象はどのようなものでしたか?また、今回のピル服薬支援プロジェクトに賛同下さった理由や、期待していることを教えてください。  正直なところ、産婦人科医からすると『ルナルナ』は避妊をするために、妊娠しない日を予測するサービスだと誤解している医師は多いと思います。 サービスの責任ではないのですが、『ルナルナ』を利用している女性がアプリでの排卵日予測などを利用し、「この日は妊娠しない」と自己判断した上で性交渉を行った結果、妊娠を疑い医療機関を受診すると、それを表面的に聞いた産婦人科医が「ルナルナ=悪」という印象を抱いてしまっている現実はあると思います。私も実際にそのように思っていた時期もありましたが、女性アスリートを支援するサービス『ルナルナ...

 エムティーアイが運営する、ライフステージや悩みにあわせて女性の一生をサポートする健康情報サービス『ルナルナ』は、先日新たに「ピル(OC/LEP)モード」(以下、「ピルモード」)を追加し提供を開始しました。
 日常生活に支障を来すような重い月経痛は「月経困難症」といわれ、国内に推定800万人以上の患者がいるとされている女性にとって身近な疾患です。『ルナルナ』は、月経困難症の治療に効果的な低用量ピルの服薬をサポートするため「ピル服薬支援プロジェクト」を立ち上げ、その取り組みの第1弾としてアプリで服薬を支援する「ピルモード」がスタートしました。
 今回は、本プロジェクトの監修医であり、長年月経困難症の患者と向き合ってきた東京大学医学部附属病院 産婦人科 准教授の甲賀先生のインタビューをお届けします。

 

 

東京大学医学部附属病院 産婦人科 准教授 甲賀かをり先生

先生_正面

 ≪経歴≫

1996年 千葉大学医学部卒業 東京大学医学部付属病院 産婦人科 研修医

1997年、1998年 三井記念病院、国立霞ヶ浦病院(現:独立行政法人国立病院機構霞ヶ浦医療センター) 産婦人科研修医

1999年~2002年 大学院

2000年 産婦人科専門医取得

2003年 武蔵野赤十字病院産婦人科医員

2004年 東京大学医学部付属病院 産婦人科 助手(その後助教)

2006年~2008年 豪州プリンスヘンリー研究所、米国イエール大学留学

2008年 帰国、留学生や大学院生の指導を開始

2011年 生殖医療専門医、婦人科内視鏡技術認定医取得

2013年 東京大学医学部付属病院 産婦人科 講師 病棟医長

2014年 日本内分泌学会 専門医・指導医取得

2014年 東京大学医学部付属病院 産婦人科 准教授

 

●インタビュー日:2019年10月3日

長年月経困難症の治療と啓発に携わってきた医師として、医師と患者、それぞれが感じている“ピルへのハードル”を低くしたい

どのような背景で月経困難症の啓発活動をされているのでしょうか。

 私は1996年に医師になり、1999年から4年間大学院で子宮内膜症に関する研究をしてきました。その頃日本では避妊用の低用量ピルが世の中に出たばかりでしたが、海外では既に子宮内膜症や月経困難症に低用量ピルが効果的だということが論文などで証明されていました。そのため、子宮内膜症や月経困難症などの症状で来院する患者さんには充分に説明を行ったうえで、希望する人には当時は適応外使用だった低用量ピルを処方していました。そのような時代が10年ほど続き、その後、時代の波もありピルも段々と世の中に広がり始め、月経困難症や子宮内膜症に関する啓発など、社会的な活動に参加する機会も何度か頂きながらここまで来ました。臨床現場での課題などを肌で感じる経験も多く、ピルの処方、服薬には患者さん側にも医師側にも越えなければならないいくつものハードルがあることを実感しています。

 

ピル処方において、医師が感じるハードルとはどのようなものでしょうか

 医師側のハードルには、情報不足や患者さんへの説明の困難さがあると考えています。
 産婦人科医と言っても様々で、お産がメインの先生もいればがん治療が専門の先生もいるため、このようなピルの啓発に関する取り組みがまだまだ届いていない人もいます。そのため、重い月経痛を抱えた女性が勇気を出して婦人科を受診しても、そこで先生に「ピルなんて副作用があるからやめた方が良い」などと言われた、というようなことも少なくありません。また、低用量ピルにベネフィットとリスクどちらも存在しているのも事実で、医師の中には患者さんが想定外の副作用で苦しむことを懸念している人も多いでしょう。患者さんへの薬剤についての説明のコツや、医師側が抱える懸念を克服していくためのヒントを提供するなど、もっと医師に向けての声掛けを強化し、先生方のハードルを下げるお手伝いができないかと常々考えています。

 

ピルの服薬に関して患者が感じるハードルとはどのようなものでしょうか

先生_横 患者さんが感じるハードルには大きく3つの段階があると考えています。
 まず1つ目が、病院を受診するまでのハードルです。日常的に月経痛を抱えている女性は多くいますが、その状態が当たり前になりつつある中で、月経痛を病気と疑って婦人科を受診することは簡単ではないと思います。2つ目に、医師に症状を伝え、ピルの選択肢を提示されたときに「服薬を決断する」というハードルが生まれます。薬剤についての正しい知識がなければ、“ピル=避妊”だとか、“性に奔放な女性が飲む薬”というイメージだけが先行してしまい服薬を決断できない人もいます。また、本人に抵抗がなくても、保護者がネガティブなイメージを持っているがために薬を受け取らせないケースもあります。そして3つ目に、服薬をきちんと継続する、という段階でのハードルです。ピルは、飲み始めの初期に起こりやすい吐き気や不正出血、むくみ、血栓への恐怖などから、1錠でやめてしまう人が沢山いることが現実です。これらのハードルをなくすためにも多方面からのアプローチが必要となり、今回の『ルナルナ』との取り組みもその一環だと捉えています。 

性教育に変革を。包括的な知識を若年層に伝える基盤を構築したい

女性の健康について正しい理解を深めるために、学校教育はどうあるべきでしょうか。

 根本的なアプローチを考えれば、学校教育の変革が必要だと思います。
 昔から、性教育においては「いかに避妊するか」というテーマの議論は進んできた一方で、例えば「何歳まで子どもを産めるのか」、「まだ妊娠を望んでいない時期にどのようなケアをしていれば、実際に子どもを望んだときに描いているライフプランを実現できるのか」、ということを考えさせる機会が少ないのが現状ですよね。勿論、若年層の妊娠が問題になることもわかりますが、それだけがフィーチャーされすぎて、家族を持ちたいと思ったときのために必要な知識が充分に備わっていない、それを伝える基盤が欠落しているということは大きな課題です。また、少女が月経痛や月経不順を抱えていたり、無理なダイエットなどにより無月経になってしまったときに、家族や婦人科に相談すべきだという内容が教科書には載っていません。そのため、異変に気が付けるのは一部の意識の高い部活動の顧問や養護学級の教員だけで、非常に属人化した状態になっています。

 私も養護の先生と性教育について話し合ったり、保健体育の教科書に記載する内容をどうすべきかを文部科学省の関係者と検討する機会があったり、学校教育に関しては強い関心を持っています。しかし、学習指導要領は10年に1度程度しか変更されないため、今すぐ抜本的な変化を望めるかというと難しく、先は長いと思います。ただ、性教育の進化を真剣に考えている医師は沢山います。 

就労環境の整備はもちろん、若年層から正しい情報にたどり着ける仕組みづくりを

ピルへのハードルを下げるための動きは既にあるとは思いますが、あと一歩先に進めるためにはどのようなことが必要でしょうか

先生_下向き 中高生、大学生、働く女性、それぞれに響くアプローチは異なりますので、ひとつの手段ではなかなか浸透しないだろうと考えています。例えば働いている女性は、病院に行きたくてもなかなか「月経」を理由に会社を休みにくいですよね。これが月経ではなく、目に見えるケガや不調であれば周りの人も病院へ行くように声をかけてくれると思いますが、月経痛の苦しみは本人もあまり表に出せず、月経が終われば症状もなくなってしまうため、後から「先月の月経痛がひどかったから」と受診できる人は少ないと思います。さらに、月によっては症状の重さも異なり「今月は軽いから大丈夫」などと様子を見ているうちに半年が経過していたというケースも少なくないため、症状が表れたときに堂々と休んで医療機関を受診できる環境整備が非常に大事だと思います。

 若年層に関しては、月経にまつわる情報をスマートフォンやSNSで確認している人が圧倒的に多く、母親や学校の先生に相談する人は少数派のようです。ただ残念なことに、それらしいキーワードで検索しても、きちんとした医学的エビデンスに基づいた記事やサイトにたどり着ける人は少なく、診察をしていても、著名人のブログや民間療法のサイトなどに行き着き、そこに書いている情報をそのまま信じてしまう人があまりにも多いように見受けられます。情報があふれて正しい取捨選択ができないがために、診察に訪れるまでに遠回りしてしまうのだと思いますが、だからこそ、正しい情報が掲載されたサイトにきちんとたどり着けるような仕組みや工夫が必要だと考えています。  

産婦人科にとって『ルナルナ』は手を組むべきパートナー

そのような課題があるなかで、『ルナルナ』への印象はどのようなものでしたか?また、今回のピル服薬支援プロジェクトに賛同下さった理由や、期待していることを教えてください。

 正直なところ、産婦人科医からすると『ルナルナ』は避妊をするために、妊娠しない日を予測するサービスだと誤解している医師は多いと思います。
 サービスの責任ではないのですが、『ルナルナ』を利用している女性がアプリでの排卵日予測などを利用し、「この日は妊娠しない」と自己判断した上で性交渉を行った結果、妊娠を疑い医療機関を受診すると、それを表面的に聞いた産婦人科医が「ルナルナ=悪」という印象を抱いてしまっている現実はあると思います。私も実際にそのように思っていた時期もありましたが、女性アスリートを支援するサービス『ルナルナ スポーツ』の監修医をされている能瀬さやか先生のお話を聞いたり、実際にアプリを使ってみて、サービスの仕組みやデザインなどに触れたりしているうちに、このようなツールを上手に使うことで女性にベネフィットが生まれることがわかってきました。

 私は常々、女性が基礎体温などのヘルスデータを『ルナルナ』に限らず何らかの形で記録しておくことの重要性を患者さんに指導しています。全くリテラシーがない人は、診察の際に最終月経日や痛みなどの症状を聞いて覚えておらず問診にも時間がかかるため、私の患者さんにはきちんと記録を付けさせ、月経の何日目に痛み止めをどの程度飲んだのかなども意識してもらうようにしています。それが習慣づくことで体調の変化や傾向にも自ら気が付けるようになり、PMSなどの把握・対処にも効果的ですので、妊娠希望/避妊希望に関わらず女性にとって必要な行動だと思いますね。ケースとしては少ないですが、気胸などが月経とリンクしている人もおり、そのような関係性は記録していないとわかりづらいので、記録することで自分がいつ苦しくなるのかなどを事前に把握するきっかけにしてほしいです。医師としては、最終的にはどのような対処を行えばカラダが楽になるのを知って欲しいので、広く女性の健康を支援するためにも『ルナルナ』のようなサービスとうまく連携することは有効な手段だと思います。

「ピルモード」のここがポイント!医師と患者の新しい懸け橋に 

今回監修頂いた「ピルモード」の特徴や、臨床現場でみるべきポイントを教えてください

キャプチャ画面 患者さんの視点から考えると、「ピルモード」は、製薬企業が異なる複数の薬剤を同じアプリで記録・管理できるところが便利です。ピルの服薬期間に応じたアドバイスが表示される「今日のひとこと」も、服薬初期などに起こりやすい副作用で悩んでいる際のサポートとなりありがたいと思います。

 また、医師と患者さんが同じツールで服薬状況を確認できる点が魅力ですね。ピルを服薬したときに生じる副作用などを記録することは大変重要ですので、我々も以前から複写式の記入シートなどを利用して医師と患者さんそれぞれが保有できるようアナログで管理していました。ただ、患者さんによっては紙に数字だけ書く人もいれば、エクセルに症状などをきれいにまとめてくる人もいて、診察時に持参する記録の形式が異なることでとても見づらくなってしまうという課題がありました。「ピルモード」では、皆さんが同じアプリで記録したものを、「ルナルナ メディコ」※1を通して医師側のパソコンやタブレット端末などで確認できる機能がとても画期的です。医師と患者さんが同じ形式で閲覧できる情報をもとに会話しながら診察ができるのは、患者さんの治療に関する理解の向上にも必ずつながると思います。 

 

先生女の子

アプリによる臨床現場での新たな発見にも期待!

―「ピルモード」が与える影響として、どのようなものがあるとお考えですか。

 今回のアプリが臨床現場へ浸透することで、新たな発見が生まれることにも期待しています。例えば特定の薬剤を服薬した際の症状の傾向を、複数の患者さんを対象に横断的に統計を取ることも可能になるでしょうし、全国のクリニックでの薬剤ごとの利用者数や割合、継続率などを『ルナルナ』がデータとして出してくれれば、クリニックにとって役立つ情報になるはずです。
 患者さんに服薬を継続させるコツは、服用開始時に、あらかじめ発生し得る症状を丁寧に説明しておくことだと思います。そのためには、症状の傾向を深く理解していなくてはなりません。私たちは実際に患者さんに、むくみ、不正出血などの有無、あればその時期を詳しく聞いています。ただ、服薬何日目にはこのような症状が出る、という記録を詳細にとっている先生は少ないと思うので、臨床医の先生には、諸症状の傾向などに注目して「ピルモード」を活用して欲しいです。そのような情報が蓄積され、視覚的にも見やすくなっていくことで、目の前にいる患者さんのサポートになるのは勿論ですが、それがほかの患者さんに説明する際のエビデンスになったり、医師としての知見となったりしていけば素晴らしいですね。

今後、服薬支援のデータが蓄積されれば、学術的にも価値のあるエビデンスが出てくることも考えられますので、学会発表などの可能性もあると思います。臨床現場でどのように活躍するのか、今からわくわくしています。 

女性が自らの性を誇りに思える世の中へ

今後ピルを取り巻く環境においてどのようなことを期待していますか。

 アプリの提供にとどまらず、患者さんの“モヤモヤ”を晴らせる活動ができればと思っています。

 既にピルを服薬している人でも、不安に思っていることを医師に相談しきれていなかったり、服薬の継続効果をもっと知りたかったりと、“モヤモヤ”を抱えたままの人が沢山いると思っています。それを出来るだけクリアにするために、ピルをモヤモヤしながら服薬している人を集めて薬剤について説明をする場を設けたり、簡単な診察を行うイベントを開催できたりすれば理想的だと個人的には考えています。Webやアプリで正しい情報を提供しても、それを読むだけでは伝えきれないことも必ずあると思いますし、逆にアプリだからこそ取得できる情報もあると思います。せっかく始まったプロジェクトなので、情報をばらまいただけで終わらせるのではなく、アプリとリアルな場をうまく使ってお互いを補完しながら、一方的な発信だけではなく双方向的なコミュニケーションを実現させたいですね。

 また、ピルを飲んでいるということで周りからセクシャルアクティブな女性だと見られてしまうなど、ピルに対する偏見がまだまだ残っていると感じていますが、この風潮は女性が自らの性を誇りに思うことを阻んでしまうもので、医師としては非常に憤りを覚えます。女性であるからこそ生じるカラダの症状を日常からきちんと意識し、QOLを高めるために自己管理をしている行為が「ふしだら」と思われてしまうような社会は間違っていると思うので、今回のような取り組みを世の中に知らしめることで、月経や基礎体温の管理の延長にピルの管理も抵抗なく語られるような世の中にしていきたいです。

 本プロジェクトは、そのような理解の浸透のために役立つはずだと信じていますし、正しい認識を広く伝えていくことは、学術的な面も臨床現場も知る大学病院の医師としての役割だと思っています。

 

 

※1:『ルナルナ』で記録した月経周期や基礎体温などの健康情報をクラウドで保存し、患者の希望の上で提携している医療機関へデータを連携開示できる医師と女性をつなぐシステム