エムティーアイでは社員の育児休業(以下、「育休」)後の復職率が97.4%(2013年10月~2018年9月実績)となっており、男女問わず社員が育休を取得できる環境が整っています。
2019年6月に自民党の有志が男性の育休「義務化」を目指す議員連盟を発足させるなど、男性の育休取得率向上を目指す気運が高まっており、当社でも女性社員はもちろん男性社員の育休取得が広まりつつあります。
今回は、最近注目を集めている「男性の育休取得」に焦点をあて、取得した男性社員と、社員の上司にあたるマネージャーにインタビューを行い、それぞれの経験について紹介します。
Profile
育休取得者:潮見 渚
2012年に新卒で開発職として入社。社内システムや広告配信システムの構築、オフショア開発のブリッジなど様々な開発業務に携わる。直近はエムティーアイの子会社である株式会社メディアーノに出向し、その日の天気に合わせて最適なコーディネートを提案するアプリ『おしゃれ天気』のサーバ周辺の開発を担当。
家庭では今年度幼稚園に入園した長女と2019年1月に生まれた次女の父。妻は第二子妊娠を機に職場を退職し、現在は家庭に専念している。
2019年1月中旬から4月末までのおよそ3カ月半、育休を取得。
マネージャー:石井 桂子
2009年に開発職として入社。社内システムを中心にバックエンドの開発からアプリ・WEBサイトの開発まで幅広い案件に携わる。2014年に株式会社メディアーノに出向し、現在5名のエンジニアを束ねるマネージャーとしてチームを率いる。
(株)メディアーノはエムティーアイの100%子会社です
初めての育休取得は期間変更や早産でバタバタのスタートに
育休取得はいつ頃から検討し始めたのでしょうか?
育休を取る半年前頃に妻と、「長女の面倒を見ながら二人目の育児を行うのは大変だよね」「育休取れたらいいね」という軽い感じで話をし始めました。
具体的に取得を考え、会社に打診したのは約3カ月前でした。第二子の出産予定日周辺に祖父母(妻の両親)に予定があり、出産直後の心身共にサポートが必要な時期に協力を得ることが難しいことが分かったためです。
当初、育休取得期間は漠然と1カ月くらいを考えて上長やマネージャーに伝えていましたが、最終的には祖父母のサポートが受けられないこと、また4月に長女の幼稚園入園も重なっていることを考慮して、出産予定日から長女が入園して少し落ち着くであろう4月末までの3カ月育休取得を打診しました。
育休取得を打診した際、上長やマネージャーの様子はどのような感じでしたか?
ありがたいことに、「取りな、取りな~」「いいね、頑張っておいで!」という調子で快諾してもらえました。
当初マネージャーに相談した際、「取得期間は1カ月程度を想定している」と話していたのが最終的に3カ月半になってしまったので、社内の調整は大変だったと思います。もう少し早く打診すればよかったな…と思いました。
育休の取得が決まった後、手続きや業務の引継ぎなどスムーズに進みましたか?
手続きは自分自身で行うことは多くなかったため、特に問題はありませんでした。しかし、育休を取る期間が定まってからの準備期間が短かったので、社内の手続きや業務調整を行うマネージャーは大変だったと思います。
妻の出産予定日の約1カ月に、チームや部署へ育休取得をお知らせしました。
業務は1カ月くらいで引き継ぎを行いましたが、早産になり、バタバタと休みに入ってしまったので、もう少し余裕をもって業務の引継ぎが始められると良かったと思っています。
「女性の育休取得は当たり前、でも男性の場合は…?」と不安があった
育休を快諾され、いざ育休を取得することになって考えたことはありますか?
ポジティブな面と、ネガティブな面、両方ありました。
ポジティブな面では、家族と一緒に過ごせる時間が増え、子供が成長する姿を見られることがとても嬉しかったです。
普段そこまで残業は多くないのですが、長女が生まれたころは、ちょうど大きなプロジェクトが進行していて、業務が立て込む時期と重なり、毎日退社時間が遅くなっていたので、新生児から2~3カ月頃の成長する姿をなかなか見られませんでした。
業務が落ち着き、気がついた時には生まれたてホヤホヤの新生児だった長女が人間っぽく成長してしまっていたので、もう少しじっくり成長を見たかったなぁ…という思いもあり、家族そろって子供の成長を見られるのはとても楽しみでした。
一方ネガティブな面だと、エムティーアイでは女性社員が産休・育休を取得し、復帰することは当たり前ですが、男性の場合はどうなるのだろう?という不安がありました。
社内の雰囲気からして育休取得は可能であろうことは分かっていたので、多少言い出すのにドキドキするくらいでしたが、実際に育休から復帰した後のことを考えると「居場所はあるのか?」「戻った時に仕事はあるのか?」という点が特に不安でしたね。
また、育休を取得する3カ月半の間は人員が1人減ることになるので、大なり小なり職場のみなさんに迷惑をかけてしまう申し訳なさがありました。
先にも話をした通り、育休取得期間を1カ月から3カ月半に伸ばしたり、早産だったため育休取得開始時期が早まったりしてチームに負担をかけてしまったと思います。
復帰後の不安があったとのことですが、復帰後の働き方に対してイメージはありましたか?
不安はあったものの、普段から残業の多い部署ではないというのもあり、おそらく復帰後も復帰前と仕事のリズムはあまり変わらないだろうとイメージしていました。
実際、復帰した今も育休取得前と大きくは変わっていません。
育休を取る際、ご家族や友人などに相談しましたか?また周りはどのように受け止めていましたか?
私の両親に話した時は、金銭面のことだけ心配されました。笑 両親は、育休中に手当が出ることを知らなかったようです。
友人の中にはSNSなどで育休取得を報告したりする人もいますが、私はあえて言うほどのことでもないかな…ということで周りにもあまり話していませんでした。
また、家族と相談した上で、自分自身「なるようになる!何か問題が起こっても都度対応しよう」と覚悟を決めて育休取得することにしたので、育休を取ること自体には不安や焦燥感はなく、誰かに相談することはありませんでした。
スムーズな育休取得はチームのサポートがあったからこそ!
育休取得前、社内でかけられた言葉で嬉しかったものはありますか?
上長もマネージャーも二つ返事で育休を快諾してくれ、男性だからといって特別視されるようなこともなく応援してもらえたのは大変ありがたかったです。
また、打診がギリギリになってしまったので社内手続きや部内業務の調整は大変だったと思うのですが、大変そうなところもあまり見せずに進めてくれていたと思います。
今回は育休中の人員補充はなかったので、その間は人員が一人減ってしまうことになりましたが、チームからは「取ってらっしゃい」と温かく送り出してもらいました。
共に働くチームや部署のみんなで私が抜ける分の穴を埋めるようサポートしてくれたおかげでスムーズに育休に入ることができたので、とても感謝しています。
育休期間は想像以上に幸せな時間を過ごせた
次に、育休取得中から取得後についても教えてください。育休中は主にどのような役割を担っていたのでしょうか?
育休取得前から妻と話し合い、長女は主に私が見て、妻は次女の育児に専念するというおおよその分担は決まっていたので、スムーズに家庭に入れました。
私は料理が苦手なので、食事の用意は妻がすべて行ってくれていました。料理以外の家事と長女の面倒を見るのが主な役割でした。
▼育休中の大まかなスケジュール
7:00
起床し、長女の身支度などを済ませる
8:00
長女に朝ごはんを食べさせる
9:00
長女と遊ぶ
この間に、妻が昼ごはんの準備
11:00
長女に昼ごはんを食べさせる
12:00
長女とあそぶ
14:00
長女におやつを食べさせる
15:00
長女と遊ぶ
夕方の時間帯は次女の寝かしつけをする
妻はこの時間に夕食の準備
17:00
夜ごはんを食べる
18:00
長女とお風呂に入る
寝る準備
20:00
長女の寝かしつけ
21:00~翌朝
次女の育児サポート
※長女が寝てからは自分の時間も少し取れる
すべての時間帯で長女の世話だけでなく、次女のおむつ替えなどもしていましたが、次女のサポートは3:7くらいの割合で妻がメインに行っていました。
実際に育休を取得し、家族のサポートを行ってみてわかったことはありますか?どのようなことを考えましたか?
実際に家族と過ごしてみて、想像以上に毎日楽しかったし、とても幸せな時間でした。
生まれたての次女の成長を毎日見られたことはもちろん、長女がだんだん「お姉さん」として次女にやさしく接している姿を見るのも嬉しかったです。長女は少し人見知りのところがあるので幼稚園に入園してうまくやっていけるか心配していたのですが、一人で集団の中に入っていく姿に、すごく成長を感じました。
男性も、もっと気軽に育休が取れる世の中になると良い
二人の育児に携わってみると、妻一人だけで二人の子供の面倒を見ることはかなり難しかっただろうと実感しました。
次女が生まれて、軽度ではありますが長女が赤ちゃん返りしていました。また、はじめは良い子にしていた長女も1~2カ月経つ頃には、毎日パパがいる状況にも慣れてきて、わがままを言うようにもなってきます。笑
いつもは自分でごはんを食べている長女が「食べさせてくれないとイヤ!」と言うので、ごはんを食べさせてあげるだけで1時間以上経ってしまう感じで一日があっという間に過ぎていきました。
このような状況の中、妻一人で長女の世話をしながら次女の育児もするのは難しかったと思うので、私がサポートに入ったことで多少なりとも妻の負担を軽減することができて良かったです。
育休を取って家族で過ごした時間は、思った以上に幸せなものでした。
男性も育休が取れるということは知っていたものの、事例が少ないというのもあり「実際に認められるのか?」と半信半疑な部分はありましたが、取ってみて本当に良かったです。
人それぞれ考え方がありますし、「仕事を中心に生きたい」という明確な意思があるのであれば話は別ですが、少しでも家庭や育児に携わりたい気持ちがあるならば、他の男性社員も育休取得を前向きに検討することをお勧めしたいです。
また、社内はもちろん、社会全体的に男性がもっと気軽に育休を取得できる世の中になっていくと良いなと思いました。
育休取得に対する妻からのコメント
一人目のときの出産直後はとても大変だったため、次女の出産後に長女を十分にケアすることは難しいと考え、産後から長女が幼稚園に入ってペースがつかめる4月末まで育児休業を取得してもらいました。
夫が長女のケアをしてくれたからこそ、長女も心に余裕をもって新しい家族である次女を迎え入れて可愛がることができたのではないかと思います。とてもありがたかったです。
また、兄弟姉妹がいるとなにかと後回しになってしまう下の子のケアも、人手が足りていることで待たせることなく対応できたので、無駄に泣かせることもなく、母子ともに和やかに過ごすことができました。
今回は二人目の出産で育休を取得してもらいましたが、なにもかもはじめてで辛かった一人目のときにも夫のサポートが欲しかったな…と思います。
男性も育休を取得することで、育児に対するお互いの負担を軽減するだけでなく、日々めまぐるしく変化する赤ちゃんとかけがえのない時間を過ごせる貴重な時間になると思います。
続いて、チームのマネージャーである石井から育休取得にあたって行ったこと、協力体制の構築などマネジメントの立場から見た男性の育休取得について話を聞きました。
覚悟を決めて受け入れた育休期間の変更、部署をあげてのフォローアップ
まずは育休取得を打診された際、どのようなことを考えましたか?
育休取得の数カ月前に初めて育休取得について相談を受けました。その際、育休の取得期間の希望は1カ月ということで相談を受けていたので、1カ月であれば業務調整をすれば問題ないだろうと考えていました。
しかし、取得予定の1カ半前くらいのタイミングで、やはり期間を3カ月に変更したいと打診を受けました。その時に「人員どうしよう?」「業務調整だけで大丈夫か?」という課題が頭に浮かんだものの、部署としても私個人としても希望通りに育休取得してもらいたいと考えていたので、どうにかしてサポートしようという気持ちでした。
育休まで時間が無い中で急に人員を補充するというのも難しかったため、マネジメント側としては、「3カ月どうにかして乗り切ろう!」と覚悟を決めました。
当初の想定より長くなった育休期間はどのようなフォロー体制を構築していたのでしょうか?
サービスの企画側から出てくる開発側への要望や要求の中には、普段、潮見さんが担当する領域のものもありましたが、その領域で対応できない分、他の領域に手を入れることで要望を形にできるように対応してクオリティを担保しました。
具体的に言うと、潮見さんは『おしゃれ天気』というアプリのサーバ周りの開発を担当していたのですが、通常サーバ周りの開発で対応することをアプリ側の開発で対応することで、企画側が実現したいことを実現できるようにしました。※
普段からどうすれば要望を実現できるか、その時々で実現可能な方法を検討して対応する方針で業務を進めているので、潮見さんがいない期間の特別対応ということではなく、普段業務を進める上で積み重ねてきたものがベースにあったからこそ、普段の延長線上で違和感なく対応ができたと思います。
※サーバ側とアプリ側それぞれに専門性をもつ開発者がおり、担当が分かれています。
人員が少なくなった分、チーム内で負荷がかかる人もいたのでしょうか?
なるべく業務調整を行って、特定の人員に負荷がかかる状態にならないようにしました。
私自身、業務調整によって担当する領域が増えたということもありマルチタスク感はあったものの、大幅に労働時間が増えることもありませんでした。
また、業務が多岐にわたっていることを周りの人も理解し、企画側も開発側も協力してくれていたおかげで、大変さはあまり感じませんでした。
それでは、育休を取ることによってチームとして困ったことはあまりなかったということでしょうか?
業務上はさほど困ることはありませんでした。
しかし私自身、今回初めてチーム内で育休を取る人に対応することになり、初めてのことが多かったので戸惑うこともありました。例えば期初に立てた目標に対する達成度の評価など、事前に育休取得期間を考慮していなかったことへの対応です。
育休取得期間が急遽変更になったり、取得開始時期が早まったこともあり、細かい部分で十分に詰め切れなかったので、もう少し早くから休む期間を考慮した対応を始められていればよかったなと思います。
育休を取りやすくするために大切なことは「普段からみんなで助け合う環境づくり」
今後、社員がもっと育休を取りやすくなるためには何が大切ですか?
今回の潮見さんの育休期間を振り返ってみると、3つ良い点があったと思います。
1つ目は、個人が持つノウハウや普段の業務の進め方をチーム内で使っているバックログなどのツールに資料として残していたことです。潮見さんがいない間も、その情報を見て他の人が対応することができていました。
2つ目は、普段から課題に対してトライ&エラーをくり返しながら自分のできることを積み上げて、実現していく土壌ができていたことです。
私たちはM&Aを経て、もともとは他社が運営していたサービスを多く扱っています。人が作ったサービスに対して、どうやって自分たちがやりたいことを実現するか、課題に対してチャレンジしていかなければならない状況もあり、普段からチームのメンバーが個々人の能力をいかして、課題解決に向き合っています。
そのため、人が抜けることにより今までやったことのない領域の課題や要望に対峙しなければならない場合にも、フットワーク軽く対応することができたのだと思います。
そして最後に、普段から企画と開発が密にコミュニケーションが取れていて、部署全体として協力しあう雰囲気が醸成されていたことが良かったのではないかと思います。
企画側も開発側もお互いの事情を汲もうという意識が形成されており、大変な中でも調整をつけられる環境になっていました。
ここ1年で企画職の社員とも1on1を行って話す機会が増えたり、合宿を行って部署としての一体感が醸成されたことによって「育休を取りたい」と言い出しやすい環境になり、育休を取る人をみんなでサポートしようという風土ができてきたのではないかと思います。
部署内での協力体制があることで、育休を取る人もサポートする周りの人たちも「自分ひとりだけで何とかしなければ」と思わずに済み、安心して業務に取り組むことができると思います。
普段から意識せずともみんなで助け合う環境が整っていれば、それぞれの社員が要望を言い出しやすくなり、育休を取りやすくなることに繋がるのではないでしょうか。